佰弐拾壱話 飯の時間 ページ23
「オイ鬼!! 飯の時間だぞ、喰らいつけ!!」
実弥お兄ちゃんは、切り傷から滴る血を禰豆子の入る木箱に垂らす。
キョトンとしていた竈門君にも彼の意図がわかったらしく、顔色が変わった。
「不死川、日なたでは駄目だ。日陰に行かねば鬼は出て来ない」
「……お館様、失礼仕る」
小芭内さんの言葉に、実弥お兄ちゃんはお館様に一声かけた後地面を蹴る。次の瞬間には、木箱と共に屋敷に上がっていた。
彼が日輪刀を木箱に向けるのが見えて、竈門君は「禰豆子ォ!!」と叫ぶ。
「やめろーっ!!!」
走り出そうとした竈門君を押さえたのは小芭内さんだった。肘を背中にかけ、体重もかけて動けなくする。
竈門君割と重傷なのに、容赦ないなー……。多分ああやってやられてたら、息出来ないだろうな。
実弥お兄ちゃんは竈門君の叫びなんて気にせず、刀で木箱を何回か刺す。
「出て来い鬼ィィ、お前の大好きな人間の血だァ!!」
木箱を開ける為の把手に刀を通すと、無理矢理扉を外して木箱が開く。
ゆっくりと出てきた禰豆子は、実弥お兄ちゃんに刺された所為で傷だらけで、でも目だけは目の前の彼に固定したまま荒い息を吐いていた。
稀血の中でも鬼をより惹き付ける、実弥お兄ちゃんの血に見入っている。
「伊黒さん、強く押さえすぎです。少し弛めてください」
言ったのはしのぶさんだった。
でも小芭内さんは弛める気配が無い。
「動こうとするから押さえているだけだが?」
「……竈門君、肺を圧迫されている状態で呼吸を使うと血管が破裂しますよ」
「血管が破裂!! いいな、響き派手で!! よし行け、破裂しろ」
「天元さん、蜜璃さんが引いてます。私もですけど」
「可哀想に……なんと弱く哀れな子供。南無阿弥陀仏……」
好き勝手話し始めた柱を他所に、竈門君は呼吸を使って小芭内さんから抜け出そうとするのを止めない。
「竈門君」と咎める様にしのぶさんが彼の名前を呼んだ次の瞬間、竈門君の手を縛っていた縄が引きちぎられた。小芭内さんがまた竈門君を押さえないよう、その手を掴んだのは義勇さんだ。
竈門君は咳き込みながら、屋敷の縁側に手を着く。
「禰豆子!!」
ずっと実弥お兄ちゃんの血を見つめていた禰豆子の瞳が、竈門君に向けられた。
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ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます! 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました!更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月1日 14時