佰弐拾話 反対 ページ22
「禰豆子が2年以上もの間人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子のために3人の者の命が懸けられている。これを否定するためには、否定する側もそれ以上のものを差し出さなければならない」
落ち着いた声で言われたお館様のその言葉は正論だった。
実弥お兄ちゃんが言葉を詰まらせ、杏寿郎さんが「むぅ!」と考え込む様な声を上げる。それに追い討ちをかける様に、「それに」とお館様は言った。
「炭治郎は、鬼舞辻と遭遇している」
その瞬間の皆の驚きは、お館様が禰豆子の事を容認していたと言った時以上だった。
皆目を見開き、天元さんが声を上げる。
「そんなまさか……柱ですら誰も接触したことが無いというのに……!! こいつが!? どんな姿だった!? 能力は!? 場所はどこだ!?」
「戦ったの?」
「鬼舞辻は何をしていた!? 根城は突き止めたのか!? おい答えろ!!」
「黙れ、俺が先に聞いてるんだ!」
竈門君は実弥お兄ちゃんに髪を掴まれたままぶんぶんされ、多い質問を浴びせられた事で混乱している。こんなんじゃ答えられないよな……。
「まず鬼舞辻の能力を……」
ピタッ、と天元さんの言葉が止まった。竈門君の方に身を乗り出していた皆も元通り正面を向き、居住まいを正す。
お館様が口の前に立てた人差し指をやったからだ。
静まると、お館様はまた話し出す。
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らく禰豆子にも、鬼舞辻にとって予想外の何かが起きているのだと思うんだ」
「わかってくれるかな?」と言うお館様に、今度は天元さんも杏寿郎さんも何も言わない。ただ実弥お兄ちゃんは、「わかりませんお館様」と応えた。
「人間ならば生かしておいてもいいが鬼は駄目です、承知できない」
かと思えば、日輪刀で自分の右腕に切り傷をつけた。竈門君や蜜璃さんが「何やってるんだこの人」みたいな顔をしているけれど、勿論ちゃんと理由はある。
ただ、後で説教してから包帯を蝶屋敷に貰いに行かなくちゃと私は頭の中で予定を立てた。
「お館様……!! 証明しますよ俺が、鬼という物の醜さを!!」
191人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます! 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました!更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず | 作成日時:2021年1月1日 14時