玖拾玖話 笑顔の女の子 ページ1
雲然Aと名乗ったその子は、俺と同い年くらいに見えた。薄群青の瞳は人懐っこく細まって、お手本みたいな明るい笑顔を浮かべている。
黒髪だけど、毛先は瑠璃色。俺達とは違う形だけど、紛れもなく鬼殺隊の隊服だ。水色の羽織を羽織っていて、雲形の鍔の刀を差しているのが見える。
「君達の名前を聞いてもいい？」
「ああ、すまない！ 俺は竈門炭治郎で、こっちが我妻善逸だ」
「そう。よろしくね、竈門君と我妻君」
一層笑みが深くなった。
さっきから一言も発していない善逸が気になって横を見ると、彼は顔を真っ赤にしてAに見入っていた。Aもそれに気付いて、戸惑った様な表情になる。初めて彼女の顔から笑顔が消えた。
「あの……？」
「こら善逸、失礼だろう！ 女性の顔をじっと見つめて」
多分これ聞こえてないな、と思うくらい表情も目線も動かない。かと思えば、やっと善逸は口を開いた。
「結婚して！！」
「…………へ？」
Aがポカンとして呟く。
「すっごい可愛い！ 結婚して！ 俺多分次の任務で死んじゃうから！！」
「えっと……ごめんなさい」
「フラれた！？」
「私、出会って数分の人と結婚する勇気は……」
それもそうだろう。というか善逸、さっきの人にも同じ事言って断られてたじゃないか。
☁☁☁☁☁
落ち込んで次の任務に行く事を拒否する善逸を引っ張って、鎹鴉の指示に従って道を歩く。
青い顔の善逸とは対照的に、Aはまた笑顔だった。これから鬼殺に行くとは思えないくらい。
「Aは鬼殺隊に入ってどれくらいなんだ？ この前の最終選別には居なかった」
「私？ 私が最終選別を受けたのは２年くらい前かな。１３歳の時」
「１３歳！？ 早いな……」
２年前で１３歳という事は、やっぱり同い年らしい。
慣れているから、こんなに笑顔で居られるのだろうか。
「階級は？」
「…………内緒」
悪戯っぽく笑う。
何故内緒にされるのか分からなかったが、きっと上の方なんだろうなと思った。鬼殺に行くのに笑えている事もそうだし、強い人の匂いがするから。
Aは優しいんだろうなと思う。太陽みたいな暖かい匂いがした。
憎しみの匂いもする気がしたのは、気のせいだと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 191人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます！ 佳境に差し掛かっている掛け持ち作品がありペースは落ちていますが、そちらが終わり次第速くなると思います。 (2021年1月19日 18時) (
レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
りりり(プロフ) - 面白く、一気に読ませていだきました！更新がとても楽しみです。 (2021年1月19日 17時) (レス) id: bc9653ee41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆず | 作成日時：2021年1月1日 14時
