銀ノ魂篇/数多の王 ページ42
「家臣ならいたではないか」
そう喜々に言ったのは小太郎だった。彼は喜々に歩み寄る。
「史上稀に見る暗君だった。それにも負けぬひどい家臣達だった」
自分でも思う。あんな酷い交渉の仕方は無い。
停戦に持ち込めたのはラッキーだ。あの時点で殺されていてもおかしくなかった。
まあ、交渉も結局は意味を殆どなさなかったのだが。
「だが国を護らんと共に戦ったあの時、確かにそこに、俺達の王はいたよ」
喜々は暫く沈黙した。それからやっと、口を開いた。
「世迷い言を……そなたらの
今になって思う。
あの日あの時、忍の里での茂茂の言葉は正しかった。
「この国にもう将軍はいらぬ。あの
また少しの笑顔が浮かんだ。
ただただ、嬉しくて……誇らしかったから。
「そなたらの将軍になれたのなら、徳川喜々の人生にも意味はあったのやもしれん。礼を言う。そして、すまなかった」
彼の目が、彼にだけ見えるものを捉えた。
それで、来たか、と思った。
「そろそろ時間のようだ」
先頭に居るのは徳川茂茂。後ろにも、十数人の男達。
喜々は立ち上がると、彼等の元へ歩いていった。
「最後の将軍として、私は
「だが」。そう言って、彼は坂本や小太郎達を振り返る。笑った。
「そなたらなら、大丈夫だろう」
もう振り返らなかった。逝きながら、言う。
「あとは頼んだぞ。この国を継ぐ、数多の王達よ」
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年10月19日 19時