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銀ノ魂篇/さよならの声音が耳にこびりついている ページ32

一方その頃。A達のはるか上空、宇宙の天鳥船では大騒ぎが起こっていた。

___高杉晋助によって……鬼兵隊によって、火之迦具土神の制御装置が破壊されたのである。

事はそれだけでは収まらなかった。
火之迦具土神に充填されていたエネルギーが制御を失った事で艦内に逆流、装置を中心に甚大な被害が出る。艦内各所では次々に誘爆も起きていた。


「早急に手を打たねば、こっ……この船は、沈みます!」

「___そうか。奴等め、やったか。だがこの調子では、悪運の強い奴等も無事ではいまい」


その声に、天人の色とりどりの顔が一斉に青くなった。見上げれば居るのは、桂小太郎に坂本辰馬、徳川喜々達。


「いや。身を切らねば斬れぬ兵器だったからこそ、自ら役を買って出たのかもしれん、あの高杉(バカ)……」


彼が昔から無茶ばかりだった事を思い出し、少し息をついた。

彼等の後ろでは、沢山の解放軍が倒れている。


「武器を捨て降伏しろ。既にこの指令部は我等の手に落ちた。馬鹿げた破壊兵器ももう使えん。解放軍(おまえたち)を操り続けた盟主ももういない。お前達の負けだ」


坂本は圓翔に目線を移した。
彼は坂本に撃たれた事で、目を閉じ倒れていた。死んではいない。


「今から協力しあい処置にあたれば、この船と心中せずに済むやもしれん。だがしかし、それでもなお抵抗を続けるというのなら、それもいい」


坂本はゆっくりと、銃を構えた。


「今なら、お前らの気持ちもよく解る」


やる必要の無かった戦いだった。やめられた戦いだった。

そんな戦いで、一体どれだけ死んだだろう。この戦いで、一体どれだけ血と涙が流れただろう。


「奴等の思いが晴らせるなら、わしらのこの思いがぶつけられるなら、誰だって構やしない。この船が沈むまで、1人でも多くお前らを殺し続けてやろう」


死んだ者はそんな事望んでいないだろうか。いや、そんな事知るものか。

ただ、そうしないと自分の気が晴れない。


「解るか。わしらもお前らと変わらん。皆……同じ思いぜよ」


解放軍が、1人ずつ銃を下ろしていった。
坂本の言う通りなのだ。彼等はもっと早くから、この戦いを続ける事に疑問を持っていたのだから。

……だが。


「いい表情(カオ)だ」


声のした方を見る。圓翔だ。


「私も言われた。まだお前は死んではならないと」


彼の傍らには、銃弾を受け砕けたペンダント。


「最後の一兵まで焼き尽くせと」


銃を撃った。

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年10月19日 19時

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