わたの原

不自然 ページ9

「あの場で生き残ったのは俺達だけなんだ。俺達が黙ってりゃもうこれ以上面倒事は起きねーんだよ」


「しかしこのままでは隊長が人殺しの汚名を、」




資料を棚に戻し、神山の顔をガッと手で掴んだ。


鋭い目で射抜く。




「人殺しにでもなんでもなってやるよ。てめーがそのベラベラ軽い口を閉じねーってんならな」




そしてバッと手を離すと、目を伏せた。




「問題は、そう。あの小娘がどっからそんな話を聞いてきて俺を狙ったかって事だ」




神山が言った通り、六角屋の遺族には攘夷浪士の仕業だと説明してある。


にも関わらず、霧江は沖田を仇だと言って狙ってきた。




「六角事件(あのヤマ)を利用し、娘をたたきつけ俺を殺ろうとした奴がいる」




神山に目をやった。




「その脇差見ろ。使い古されたいい刀だ。だが一介の町人の娘が、廃刀令の御時世に何故そんなモン持ってやがるんでィ」




どう考えたって不自然だ。


沖田は鋭い目の名残が欠片も見当たらないいつもの涼しい顔で、神山に言った。




「黙らせなきゃならねェ連中がまだいる。あの時六角屋で生き残ったのは、俺達だけじゃないのかもしれねェ」




それからまた、神山をそのままの調子の目で見た。




「神山、もう１度この事件(ヤマ)洗ってこい。ついでにその血だるまの汚ねェケツもな」


「イッ……イェッサー！！」




＿＿＿そんな２人を、山崎がジッと見つめていた。

コソコソ→←潔白なんかじゃない

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