すぐ隣にずっと ページ45
「疲れた〜」
午後7時。
屯所の門を開けた途端、Aがそう言って伸びをする。
何となくムカついて、その頭をパンと叩いた。
「痛っ! 何総悟」
「1番疲れてるの誰だと思ってるんでィ」
ジト目で見ると、「ハイハイごめんなさいね」と誠意を感じない謝罪の言葉を述べながら、俺がずっと背負っていた奏多を腕に抱く。
この箱入りの坊ちゃんは、動物園ではしゃいだ反動か帰り道に歩きながらウトウトしだしたのだ。
近藤さんや土方さんから話を聞いてはいても、屯所に子供が居る事に違和感があるのだろう。
いつもより感じる隊士達の視線をA共々ガン無視して、自室に向かった。
俺の部屋の前でA(と奏多)と別れ、障子を閉めた途端座り込む。
顔を立てた膝に埋め、「はぁ〜」と溜息をこぼした。
……ライオンを見てはしゃぐ奏多を優しく見つめる、Aの姿が勝手に脳裏に浮かび上がってくる。
子供は苦手だと言いながら、嫌いなワケでは無いから、結局きちんと世話をしているA。
色々な動物を見てくだらない感想を言い合いながら、もしAとの間に子供でもできたらこんな感じなんだろうかと考えていた。
付き合うどころか想いを伝えたワケでも、そもそも土俵に立てているのかすら分からないこの状況で、それは我ながら大丈夫だろうかと思う。重症だ。
「ったく」
また溜息をついて、クシャクシャッと髪をかき回す。
アイツの事なら、誰より知っていると思ってた。
でも旦那が現れて、伊東の言葉で初めて他にも兄貴が居る事を知って。そういえば俺らと会う以前の事は殆ど知らないな、って気付いて。
ずっとすぐ隣に居ると思っていたアイツが、急に遠ざかったように感じて、どうしようもなく不安になった。
「総悟〜? 起きてるー?」
Aの声で、思考回路がピタリと止まる。
いつもは勝手に開けるクセに、珍しい。
「起きてる」
ゆっくり立ち上がって障子を開けると、Aの足元には寝ぼけ眼の奏多。
「風呂か」
「うん。よろしくね」
笑顔で手を振って隣の部屋に戻る彼女を見て、色々考えていたのが急に馬鹿らしく思えてきた。
Aは遠くなんかには居ない。今までと同じように、すぐ隣に居る。
「にーちゃん、なんか良い事あった?」
不思議そうに首を傾げる奏多に「何でもねェ」と返して、俺はコイツを風呂に入れるべく準備を始めた。
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ゆず(プロフ) - リヒトさん» すごく嬉しいです、ありがとうございます! 折角春休みなので、更新ドンドンしていこうと思います! (2020年3月16日 15時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
リヒト(プロフ) - もう好きすぎて1日で全部読んで何回も繰り返して読んでます!!笑これからも更新頑張ってください!!めっちゃ応援してます!! (2020年3月16日 15時) (レス) id: c6295103af (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - %さん» またコメントくださってありがとうございます! 受験なんかに負けず頑張ります! (2020年2月26日 15時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
% - 続編おめでとうございます!ゆずさんの紡ぐ物語は読んでいて心地良いです!カッコいいと可愛いを兼ね備える美女は正義ですね(謎理論) 更新頑張ってください!応援してます! (2020年2月26日 8時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - somariさん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2020年2月25日 16時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2020年2月21日 17時