吉原炎上篇／私の番 ページ31
「哀れな男よ」
______頭が、目の前の光景に追いつかない。
「国も主君も護るべきものを全て失い、最後は他人のものを護って死んでいくとは。己の剣にそんなに意味が欲しいか。そんな剣では何も護ることなどできはせんわ」
鳳仙は誰に向けて喋ってるの？ 銀ちゃんの白い着流しが、なんで赤く染まってるの？
指先が、細かく震える。
「己の命すらな」
……銀ちゃん？
「銀さぁぁぁん！！」
泣き叫ぶ晴太の声が、どこか遠くから聞こえるように感じる。
視界が歪んで見えてきた時、腰に回された神威の腕にギュッと力が入って、それで我に返った。
……ダメだ。まだ絶望するな。
するべき事があるから、私は
「晴太！！」
叫んだ。
涙の浮かんだ晴太の瞳が私に向けられる。
「泣いてる暇なんかないでしょ！ 銀ちゃんの頼み聞いてなかったの！？」
『俺をまた、
晴太は拳をギュッと握ると、日輪の元へ駆け出した。
______さあ、次は私の番だ。
本当は怖くてたまらないけれど。
ただでさえ神威に怪我を負わされたこの身体で、鳳仙に勝てるとは思えないけれど。
でもそれは、ここから逃げていい理由にはならないから。
「神威。離して」
乾いた瞳で鳳仙を真っ直ぐに見据えながら言えば、大人しく腰に回っていた腕が離れた。
「しょうがないな」
ニコニコ笑う彼は、やっぱり神楽のお兄ちゃんなんだと思う。
すうっと息をいつもより深めに吸って、兎の像から飛び降りる。
「次はお前か」
歩けない日輪を背負って行こうとする晴太から目線を外した鳳仙が、私を見る。
精一杯の笑顔で私は笑った。
「女だからってなめんじゃねーぞ」
「背負わせてくれよ、オイラにも。自分ばっかり背負って終わらせないでくれよ」。そんな晴太の頼もしい声を聞きながら、私が腰を落として鯉口を切った時だった。
「そいつは頼もしい話じゃな」
凛とした、優しい声と同時に、沢山のクナイが鳳仙へ降り注いだ。
「ならば背負ってもらおうかの。ここにいる皆を。貴様の母親、４９人」
頭に包帯を巻いた月詠が、後ろに百華を連れて立っていた。
「優しい息子をもって幸せじゃ、わっちゃ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - ％さん» ありがとうございます！ カッコいい女の子を目指しているので、そう言っていただけて嬉しいです！ (2019年12月20日 0時) (
レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
％ - 続編おめでとうございます！夢主ちゃんが男前な感じがして凄くドキドキさせられてます！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年12月19日 21時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆず x他1人 | 作成日時：2019年12月16日 0時
