・ ページ28
花火が始まるまで、あと20分。
土手沿いの階段に腰を下ろすと、汗をかいていた体にはコンクリートが冷んやりとして気持ちがよかった。
リナちゃんは俺の一段下で高木と並んで笑っている。
いのちゃんはこちらをちらちらと気にしながらも、もう1人の女の子が話しかけるため、その子に答えてやっている。
はぁ…俺、邪魔者じゃ?
飲んでいたプラスチックのビールが底をついて、風でカラカラと転がった。
「ちょっと、ゴミ捨てて来る!」
すくっと立ち上がった俺はみんなからゴミを回収して、先程通った道にダンボール製のゴミ場があったことを思い出していた。
「大ちゃん、もう始まっちゃうよ?」
いのちゃんが心配したように言うけど、
俺はニカッと笑う。
「だーいじょうぶだって!
すぐそこだから!」
ゴミ箱は思ったよりも近くにあって、俺の恋心と一緒に投げ入れた。
でも、そんなにすぐ戻るつもりはなかった。
風にでもあたって…そう思っていたのに、風は生ぬるいというよりもむしろ暑くって、風さえも俺を嘲笑っているみたいだった。
打ち上げ時間が近づくにつれてどんどん人が多くなってきた。人波に逆らって進んでいき、みんながいる階段のところから離れていく。
「ここでも、花火見えるなぁ…」
車が通れるようにと川に架かっている橋の下。少しでも顔を出せば、例年花火が打ち上げられる場所は見ることができそうだった。
ぽつん。暗がりに1人。
この橋から向こうには出店もなかったし、みんなこんな歩きづらい草むらよりも上の舗装された歩道を通ってくるからだ。
俺は草むらに腰を下ろして、ワイシャツのボタンをもう一つ開けた。
青と紫と黒の絵の具を混ぜたかのような空を見ていると、
「ありおかくん」
「へ、えっ高木?」
予期せぬ声に、驚いた。
「もう、花火始まっちゃうよ」
フフ、と笑って俺の隣に座った。
「おい、戻らなくていいのかよ…」
リナちゃん、お前のこと待ってると思うけど…
「俺…ありおかくんと、花火見たかったんだよね」
え?
聞き返そうとしたその時、
ひゅるるる…
ドッパーン
空に、大きな花が咲いた。
299人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まや(プロフ) - ちちちさん» ちちちさん、コメントありがとうございます!よくしろくまさんのページでお見かけしていますちちちさんですよね?|´-`*)遊びにきていただけてたなんて嬉しいですっ! (2019年4月27日 20時) (レス) id: b929bba7e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちちち(プロフ) - ときめきと切なさと背徳感にキュンとしました!最後のゆとひかのゆーとの色気ったら! (2019年4月26日 19時) (レス) id: 666edffd2b (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - しろくまさん» 大好きなしろくまさんにきゅんとしていただけたなら幸せですっ(´∩ω∩`*)ありがとうございます! (2019年4月26日 1時) (レス) id: b929bba7e5 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まや様、Twitterのやぶひかお話しを上げて下り、ありがとうございます。改めて読ませていただいて、きゅーん(//∇//)やっぱりまや様の学園物は鉄板ですね…!! (2019年4月25日 8時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - ねね子さん» 来て下さってありがとうございます(*´˘`*)どうも薮くん病み気味です(笑)ねね子さんに褒められるなんて嬉しすぎます〜(//∇//) (2018年9月30日 22時) (レス) id: 66cf309f23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まや | 作者ホームページ:http://ma-no homepage
作成日時:2018年6月5日 21時