バウッ ページ4
グチュ···
という音が卵壁の割れ目から漏れでて
殻の中では小さな命が外界へ出ようと蠢いている
『が、頑張れ···っ』
「Aや、そんなに心配するでない、
大丈夫じゃ」
そう言いながらリリアは彼女の手を取る。
「お主の綺麗な手に爪痕がつくじゃろう、
やめんか」
Aは手を拳にしてまもなく誕生する王子に
力をつけるように踏ん張るのを、王と王妃が微笑ましく見ていた。
まるで自分が親になったかのような心配ぶりを見せる彼女に、周囲の人はこの妖精に親しみを持ち始めた。
「あの方がかつてのマレフィセント様に仕えたA様らしいね」
「もっと厳かな雰囲気を漂わせるお方だと思ったよ、こんなにも愛らしい妖精様であったのか。」
下では召し使いや王家直属の臣下たちが密かに議論をしている
何せ、彼らがAを目にしたのはほぼ初めてに近かいのだ。彼女はこのツイステッドワンダーランドの色々な国を転々として茨の谷に帰って来る事が少なく、
ここに来たのは109年ぶり、と言った所だ。
多くの人が死んで土に返り、
又新しい命が誕生してこの世界を彩る。
さっき会った妖精の騎手たちは人間より遥かに寿命が長いためがゆえに彼女と面識があるのだ。
─────
ギギギ···
みるみる殻に亀裂の痕跡が走り、
バリッ
という音を立てて
小さな黒い前足が卵を突き破る
『あとちょっとだよ、
頑張って』
Aの声に応じるように
殻は次第に割れていった。
残った殻を載せたドラゴンの頭が顕になった途端に、群衆は歓喜な声を上げる。
この茨の谷の後継者が、
生まれたのだ。
Aを含める皆全員、喜びで胸一杯になった。
そのドラゴンはまだ角が生えてなく、
まだ充分に広げられない翼を小さくパタパタとはたき、
身の回りについた粘液を振り払おうとする
『生まれた！
よかった！ね！リリアちゃん』
嬉しさのあまりに彼に抱きつくとリリアは驚いたように
目を見開く。
「わしとて嬉しいわい」
そう笑い、少し赤くなる耳を髪の下に隠そうとした。
小さな黒いドラゴンは目を開き、
エメラルド色の瞳を見せると、
バウッ
と緑色の炎を吹く。
「「「おおおっ、なんとりっぱな炎だ！」」」
群衆は目を輝かせると同時に
外では大きな
ゴロゴロと雨雲が黒く空に幕をすると同時にその次期当主である幼い彼が泣き始めたのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リン - リリアちゃんカワイイ❤️続きが楽しみです (2022年11月24日 22時) (
レス) id: c3aa6be969 (このIDを非表示/違反報告)
晏昊 - はちゃめちゃドタイプ過ぎて……五回ぐらい見てしまった😅続きがめっちゃ気になるｯ!!!楽しみにしてます!!! (2022年9月20日 0時) (レス) id: 92be24dccc (このIDを非表示/違反報告)
敦 - え？好きです！続きが楽しみです！！頑張ってください！ (2021年7月27日 22時) (レス) id: b6ccf69655 (このIDを非表示/違反報告)
双葉 - リリアちゃんとの絡み大好きです！ (2021年6月19日 15時) (レス) id: 159c5aae09 (このIDを非表示/違反報告)
双葉 - 続きが楽しみです。気長に待ってます (2021年6月11日 21時) (レス) id: 159c5aae09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寝巻き | 作成日時：2021年3月5日 19時
