乾いた花も花束に足り得る。 (ページ17)

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言うと思った【SS】ページ17

最近、クラスでよく聞く「月待さんって」という言葉。
これが快くない意味だというのをわたしは感じている。

「あいつ話しかけても無視する」
「というかやる気ないよね」

聞いている限り好き勝手な言い草だ。それって君たちが気に入らないだけじゃないのか。

「っていうかさぁ〜……」

あの顔は……誰だ？席や交友関係から名前を思い出そうとする。彼女たちはこの間もずっと話しているみたいだ。

「その割には宵崎さんには媚びてない？」

……。

「わかる〜。相手選んでるっていうか。なんていうか迷惑だよねぇ、身の程弁えてほしい」

「宵崎さんも困ってるよね〜……優しいから言わないであげてるんだろうけど……」

ああ、やっと思い出した。

自分から率先して関わらない限り人の名前って忘れられてしまうものだから、少し時間がかかってしまった。

「ね、あいつ邪魔じゃない？」

彼女たちの方に歩いて、声をかけようとした

その時だった。

「……っ、律」

腕を引かれる。心なしか、わたしを止めようとしたように思うのは気のせいだろうか。

「つゆ」

「……私は大丈夫」

「……」
「大丈夫、聞き間違いだよ。だから……ね？ほら、次の授業始まるよ」
「……でも」

つゆから率先してこういうことを言うのはあまりない。確かに10分くらいの休み時間ではあるけれど……

(平気なわけが、)

それでも、彼女はわたしを止める。

「大丈夫だよ」

いつからだろうか。今のつゆの表情をわたしは随分見慣れてしまった気がするんだ。

(＿＿ああ)

やっぱり、

言うと思った。

時計の針が1秒分ずれた気がした。

＿＿＿