酸化していない世界(MISSION'?) ページ48
誰かが、呼んでいる気がする。
聞き慣れた声の筈なのに、何処か懐かしく感じるのは何故だろう。
「起きろ太宰!!」
ばしん、と音がした。背中に鈍い痛みを感じる。
・・・・・・嗚呼、背中、殴られたのか。
妙に現実的な夢を見たな。
「おい、だから起きろと云っているんだ。」
「むー、もう起きてるよ。国木田くんのおかげで素晴らしい目覚めだったよ有難う」
「そう云うならその子供が拗ねた様な真似をするな。・・・俺はこれから依頼人の元へ向かう。お前とさっさと仕事に戻れ。書類が溜まっているぞ」
国木田くんは眼鏡をカチャリと掛け直し、溜息を一つついた。そして此方をじろ、と睨み、「おい太宰、ついでに何故か一緒になって寝ている敦の事も起こしておけ。そして仕事中に寝るなとも伝えろ」と、何とも上から目線に告げた。私はそれに何時もの通り間延びした声で返し、ドアから出ていく国木田くんを見送った。
・・・・・・さて。
「ほら、敦くん起き給え」
ゆさゆさと敦くんの身体を揺すってやると、身動ぎし乍うーん、と目を覚ました。
「・・・・・・え、此処、は探偵社?あ、じゃあ探偵部は?あれ?」
・・・・・・探偵部?
「敦くん、その話詳しく」
「え、あ、はい。凄く現実的な夢を見て居たんです。僕と皆さんは学校へ通っていて。僕はバスケットボール部に入ってましたが、皆さんは問題児揃いの探偵部という部活に入っていたんです、けど、あれ?でも一人だけ社員じゃない人が居たような気が・・・・・・あ、そう言えば夢の中で太宰さんに伝言を預かっていたんです。」
確か・・・・・・と敦くんは頭をぽりぽりと掻き、思い出す動作をする。
「織田さん、と云う人だった気がします。彼方ではもう云えないから、と。お前はもう、立派な光に生きる人間だ、と云っていました・・・・・・飽く迄も夢ですよ?」
「敦くん、私もその夢見たよ」
ええ、と驚き、黙々と呟きはじめる敦くん。
敦くんと同じだったのは非常に不思議だが・・・・・・夢ならば色々合点がいく。昔は不治の病などと云われていた白血病だが、今は医療技術が進化を遂げ、治せない病気では無くなった。
彼方ではもう云えないから、か。織田作、君は分かっていたんだね。
二度と逢えない彼に想いを馳せていると、一つの疑問が浮かんだ。
夢の中では、確か誰かが白血病で亡くなった筈。でも、誰だっけ。
敦くんも認識していた様だし、勘違いではない筈だ。
一体、誰だったんだろう。
42人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やっさん(プロフ) - にーさんのイメログの、人物夜及さん、だったのですね。それにしても、夜及さんの前に、あの、太宰治さんが手玉にとられるとは(苦笑)。ハッピーエンドで、よかったです。 (2020年4月27日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - 月桂樹さん» 相方の代わりに私がお返事させていただきます。いい作品とのお言葉、ありがとうございます。それはCSSの関係でして、本当は後ろに背景が表示されます。読み込みの問題かと思われますので、ご了承ください。 (2019年2月7日 17時) (レス) id: 8aacdcc603 (このIDを非表示/違反報告)
月桂樹(プロフ) - いつも読まさせて頂いております!とても良い作品でお気に入り登録させて戴きました!少し何ですが、白が背景なのでどうしても説明文?が黄色なので見えづらいです…。長文失礼しましたm(_ _)m (2019年2月7日 11時) (レス) id: 5423a3a7ff (このIDを非表示/違反報告)
包帯運び屋の蛞蝓(さぶ) - 有難う御座います!全然更新できてなくて申し訳ないです・・・ (2018年8月29日 21時) (レス) id: 447c5e9774 (このIDを非表示/違反報告)
愛∞ - 包帯運び屋の蛞蝓さん» 大好きです。面白いです。更新頑張ってください! (2018年8月26日 11時) (レス) id: 64e52e5a9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:包帯運び屋の蛞蝓とアイカ | 作者ホームページ:((o(^∇^)o))
作成日時:2018年7月20日 6時