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【二十一話】 ページ21

2人の目があった。
数十秒の沈黙。

先に話し出したのは夜乃だった。


「太宰君。」


顔を上げて、太宰を見る。


「そ、んな顔をしないでくれ。


君とわ、たし、は友達だろ?


聞いてない、から。わたしは、何も・・・。」


涙をこらえきれずに、思わず下を向く。
気持ちが溢れて、涙に溶けて行くようだった。


「夜乃さん。全部、誤解なんです。


私は、全部読んだんですよ。ただ、


ただ教室で読むのが嫌で・・・。


皆に、夜乃さんから借りた本を見られたくなくて。


小さな独占欲だったんです。」


ただ、それだけだった。
ただ、独占したかった。
誰にも見られたくなかった。


「夜乃さん。」


今、もう一度名前を呼ぶ。
夜乃はゆっくりと顔を上げる。


「好き、です。友達を超えて、


私の隣にいてください。」


一世一代の告白。
沈黙が流れる。

夜乃は状況を把握できなかった。
太宰が、自分を、好き?

願ったりかなったりじゃないか。

と、誰かが云う。

嗚呼。これは私の本心だ。


「私、は、君が、好きだ。


ずっと、君が来るのを待ってた。」


そして、これからも待ってるから。


夜乃は太宰に笑顔を見せた。

太宰は、子供のように嬉しそうに笑い、

夜乃をそのまま抱きしめた。

いつのまにか止まっていた涙と、

肩に顔を埋める太宰の泣く声に、

夜乃は心を奪われていた。


これからも、待ってる。


少しだけ待ってて。




きっと、すぐだから。

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やっさん(プロフ) - にーさんのイメログの、人物夜及さん、だったのですね。それにしても、夜及さんの前に、あの、太宰治さんが手玉にとられるとは(苦笑)。ハッピーエンドで、よかったです。 (2020年4月27日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - 月桂樹さん» 相方の代わりに私がお返事させていただきます。いい作品とのお言葉、ありがとうございます。それはCSSの関係でして、本当は後ろに背景が表示されます。読み込みの問題かと思われますので、ご了承ください。 (2019年2月7日 17時) (レス) id: 8aacdcc603 (このIDを非表示/違反報告)
月桂樹(プロフ) - いつも読まさせて頂いております!とても良い作品でお気に入り登録させて戴きました!少し何ですが、白が背景なのでどうしても説明文?が黄色なので見えづらいです…。長文失礼しましたm(_ _)m (2019年2月7日 11時) (レス) id: 5423a3a7ff (このIDを非表示/違反報告)
包帯運び屋の蛞蝓(さぶ) - 有難う御座います!全然更新できてなくて申し訳ないです・・・ (2018年8月29日 21時) (レス) id: 447c5e9774 (このIDを非表示/違反報告)
愛∞ - 包帯運び屋の蛞蝓さん» 大好きです。面白いです。更新頑張ってください! (2018年8月26日 11時) (レス) id: 64e52e5a9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:包帯運び屋の蛞蝓とアイカ | 作者ホームページ:((o(^∇^)o))  
作成日時:2018年7月20日 6時

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