【学スト】文学少女と栞と恋と【太宰治】

【十四話】 ページ14

夏にもかかわらず、と
云うのは常套句と云える。

しかしその常套句を使わなければ
表現できない程の暑さが、
夜乃を襲っていた。

帰り支度をして帰り道についたのは
いいものの、暑すぎる。

これは親にも内緒で冷たいものでも
買って行くのが得策だろう。

と判断して、夜乃の目は公園に向けられた。
珍しく、と云う訳でもないが
公園には移動販売車が出ている。

この公園ではおかしくはないことだが、
なんとも今日は運がいい。

鼻歌交じりで駆け出す夜乃。

半袖セーラー服の袖口が、
パタパタと音を立てて居る。

制服で走るなんて久しぶりだが、
夜乃は楽しいとすら感じていた。


「お兄さん！チョコミント一つとサイダー！」


「かしこまりましたぁ。560円です。」


「はい。」


「お釣りの40円です。レシートは？」


「一応もらっときます。」


相応のやりとりを経て、夜乃は注文を終えた。
少々時間がかかるとの事だったので、
近くのベンチにいることにする。

たまにはこう云うのもいいかもね、
と夜乃は鞄から本を出しながら思う。

図書室の面白そうな本は粗方
制覇してしまった夜乃は、
今迄読まなかったジャンルに手を出した。

そのおかげで太宰ともよく話すわけだが。

しかし、彼女には今思案すべき事がある。

正に太宰のこと。


「彼奴、本当は・・・。」

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