【文スト】噂の最強異能力者は華麗にヨコハマを闊歩する

・16 ページ19

太宰の追求は続く

雲から覗く月明かりの木漏れ日は、窓を介して敦の頭上を照らし、それが届かぬ暗闇に未だ3人は居た


まるで、敦を尋問しているが如く



「君がこの街に来たのが２週間前、虎が街に現れたのも２週間前

君が鶴見の辺りに居たのが４日前、同じ場所で虎が目撃されたのも４日前」



太宰の声は、1枚ずつ敦の中の何かを暴いて剥がしていくようだ

敦は震える体に鞭を打ち、背後の窓から明かりの方へ顔を向ける


先程までかかっていた雲は也を潜め、青白い光の満月が、彼の両目に映し出されていた



「国木田君が言っていたろ？
武装探偵社は、異能を持つ者の寄り合いだと。」


「ぁ、あ、」



その時が近付いている

執事は静かに彼女の隣に侍り、万が一の時に備えている


そして、敦の体に変化が現れた

体から青い光が飛び出し、彼を囲むように次々と現れる

彼は苦しみに叫ぶが、異能の影響は留まるところを知らない



「あ"ァァァァァァァァァァァ！！！？？」



絶叫。しかしこ それが異能の作用であれば、それは本人がコントロールするしかない。

彼女達もできないことはないが、執事は兎も角彼女の異能は元組織が何人の構成員を犠牲にしようとも守ろうとした極秘事項。


故に、彼の行く末は、この探偵に委ねられていた



「あまり知られてはいないが、この世には異能の力を持つ者が少なからずいる
そして、その力で成功する者も居れば………



力を制御出来ず、身を滅ぼす者もいる」



敦の体が変化を迎えた

服は弾け飛び、靴も破れ、その体の下に出来上がったのは



巨大な体躯を持つ、月の光を纏いし黄金の目を持つ白虎



「多分、施設の人達は虎の正体を知っていたが、君には教えなかったんだろう。

君だけが、わかっていなかったのだよ。
君も、異能の力を持つ者だ


______現身(うつしみ)に野獣を降ろす、月下の能力者」



彼女はその成り行きを、執事と共に静かに見守る

そしてとうとう、白虎が太宰に襲いかかった



《ガァァァァァ！！！！》



白虎は大きな体躯を物ともせずに素早く動き、体の全てを太宰にぶつけていく

しかし太宰は大人しくやられる様子も無く、虎よりも早いスピードでひらりひらりと躱しては、倉庫内全体を使って逃げ回る



「こりゃ凄い。人間の首くらい、簡単にへし折れるくらい」


『こら、太宰くん。倉庫の荷物にもちゃんと使い道があるのだからね。壊してしまうのは可哀想だよ


そろそろ終わらせてやりなさい』

・17→←・15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す