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夕飯はオムライスとコンソメスープ、デザートにプリンをつけることにした。ちなみにあっくんはトマトクリームパスタとシュークリーム。

食事を乗せたトレーを持ってテーブルに戻れば、先輩方二人は食後のコーヒーと洒落こんでいた。


「二人ともお帰り。那音はオムライス?案外お子様舌なんだね」


桐生先輩はやけに慈愛のこもった目線を向けてきたが、気のせいだと信じたい。

茶化しにも聞こえたその言葉は華麗に無視し、席に着いた俺はあっくんと揃って頂きます、と手を合わせる。

黄金色の卵からふんわりと漂う出来立てを象徴する湯気になんとも食欲がそそられる。ついでケチャップの酸味がかった香りが鼻腔をくすぐった。
視覚と嗅覚へのダイレクトな刺激に、お手本のように俺の腹が鳴いた。


「――おいしい」


堪らずスプーンですくったオムライスはとろりと滑らかに舌を滑った。濃いめのケチャップライスに優しい卵が絶妙にマッチしている。

あまりの美味さに感動して思わずあっくんの方を見れば「なおくん一口頂戴!」とあーんをせがまれたので、なんの躊躇いもなくオムライスを一口分乗せたスプーンを差し出す。

しかしあっくんの口に入るまであと数十センチというところでオムライスは別の場所へ飲まれた。その犯人は――


「んん、相変わらずここのオムライス美味しいね」


――もちろん桐生先輩である。
もぐもぐと咀嚼しながら微笑む先輩だが、いやこの人何してんの?


「ちょっと先輩?それあっくんのです」

「だって俺も食べたかったんだもん」

「いや子供じゃないんですから。てかあなたもう夕飯食べ終わってるでしょう?」

「那音のあーんは別腹だよ」


何が俺のあーんは別腹、だ。
桐生先輩の行動の意図が読めなくて思わず眉間をおさえると、真横の飛鳥先輩が「悪いな、こいつ別に悪気があってやってるわけじゃないから」と桐生先輩の代わりに謝ってくれた。

なんて人ができているんだ。桐生先輩のお友達とはとてもじゃないけど思えない。

飛鳥先輩には会釈で返して、とりあえずお預けをくらってしょんぼりしているあっくんに再びオムライスを分けてやることにした。


「んー、ほんとだ。おいしいね、なおくん!」


ふんわりと微笑んだあっくんに俺も思わず口角が緩む。あっくんが幸せそうだと俺も幸せになる。

その横で「俺にも微笑み返して欲しかったなあ」なんてぼやく桐生先輩は意図的に無視した。

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なつき - 作者さん、どしたん? (2019年8月1日 21時) (レス) id: e36f276856 (このIDを非表示/違反報告)
ペコ - めっちゃハマりました!最新頑張って下さい! (2019年7月18日 0時) (レス) id: d6a2adbe5a (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 更新してええええ泣 (2019年7月17日 16時) (レス) id: fdd612b178 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんあんこ - けしからん!もっとやれ!(サーセン) (2019年7月14日 22時) (レス) id: 57bf108e06 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 仙椿(せんつばき)さん» コメントありがとうございます!尊いだなんてそんな照れちゃいます( ¯///¯ ) 頑張ります、今後ともよろしくお願いします〜! (2019年6月30日 0時) (レス) id: 4a341f9b26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2019年6月8日 22時

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