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「ねえほら、桐生先輩こっち見てるよ。あ、手招きしてる!なおくん、ほら、手招き!」
楽しげな声色のあっくんを他所に俺は内心非常に悩んでいた。
夕食時の人がごった返す食堂で桐生先輩と接触なんてしたら注目の的になること間違いなしだ。なんなら過激派に目をつけられて後々酷いいじめを受けるかもしれない。
しかしこちらに気付いて手招きまでしてくれた桐生先輩の厚意を無下にするのもどうかと思う。
さてどうしたものかと考える内に、俺の背中はぐいぐいと桐生先輩がいるテーブルの方へ押され――え、押され?
「ちょ、あっくん!?何背中押してんだよ!」
「だってなおくんがなかなか動かないから〜!桐生先輩待ってるよ、早く行こ!」
華奢なその身体のどこにそんな力を隠しているんだ、という力量で俺の背中は押され付随して足も先輩の方へと動いていく。
その距離は順調に縮んでいき、あっという間に桐生先輩の目の前に着いてしまった。ほんと何やってくれてるんだあっくん。
「那音。さっきぶりだね」
「あー……そう、ですね」
「……なんかぎこちなくない?」
あからさまに先程と態度が違う俺を怪訝そうに見つめる桐生先輩から目をそらす。
だって親衛隊が過激だなんて話を聞かされた後でフレンドリーに接しろという方がおかしいだろ。
なんて返事したらいいかもわからず押し黙っていると、何かを察したらしいあっくんが口を開いた。
「なおくん、お腹減っちゃって機嫌悪いんですよ」
「ああなるほど。いいよ、俺の隣スペースあるから椅子持ってきて座りな」
「あ、ほんとですか?ありがとうございます!じゃあ俺椅子持ってくるから、なおくん待っててね!」
手早く会話を済ませたあっくんはびゅーん、という効果音がつきそうな程勢いよくその場を後にした。残ったのは俺と桐生先輩と、恐らく桐生先輩のご友人であろう青ネクタイの男子生徒の三人のみ。
何を話していいかわからず、とりあえず「ありがとうございます」と告げると彼は笑って「どういたしまして」と言った。
「ところで、さっきの子は?」
「俺の同室の子で、阿久津 奏です」
「ふーん」
自分から聞いてきた割にはどうでもよさそうな桐生先輩に、やっぱり少し変わった人だなと思った。
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なつき - 作者さん、どしたん? (2019年8月1日 21時) (レス) id: e36f276856 (このIDを非表示/違反報告)
ペコ - めっちゃハマりました!最新頑張って下さい! (2019年7月18日 0時) (レス) id: d6a2adbe5a (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 更新してええええ泣 (2019年7月17日 16時) (レス) id: fdd612b178 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんあんこ - けしからん!もっとやれ!(サーセン) (2019年7月14日 22時) (レス) id: 57bf108e06 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 仙椿(せんつばき)さん» コメントありがとうございます!尊いだなんてそんな照れちゃいます( ¯///¯ ) 頑張ります、今後ともよろしくお願いします〜! (2019年6月30日 0時) (レス) id: 4a341f9b26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2019年6月8日 22時