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「ただいまー」
帰りがけ、お気に入りの青果店で
甘酸っぱいちょっぴり潰れたお月様を袋いっぱいに抱えた。
「おかえり」
パラパラ新聞を読みながら、鉛筆をせっせと運ばせるやぶ。
俺の大好きな横顔がさわやかな香りの奥にあった。
「……レモン?」
「あぁ、うん。ひさびさにレモンパイ作ろっかなって」
「へぇ」
「あ、そうだ。
こんどこれ、一緒に行こうよ。たかきさんに貰ったの」
そういえば……、思いだしたチケットの存在。
テーブルの上に置いた映画のチケットは、
尻ポケットに入れてたせいでちょっとシワシワになっていてた。
「……おれの?」
「ん、そう。そろそろ家出ろって」
ひかる一人で行ってよ。
そういって、鉛筆をおくと
どさっとガウンを翻してソファに寝転んだ。
「……ん、」
目を瞑ったやぶは、そのまま規則正しい呼吸を始めた。
『ひかる、これあげるよ。』
『……なにこれ、いらねーよ』
『こういうのするとね、なんだか大胆になれるよ』
悪魔のささやき。とでも言おうか。
いのちゃんのあまいフェイスに惑わされたおれは、ついそれを受け取ってしまった。
「ばか、」
ゴミ箱に投げかけた、銀色のスティック。
それを握りしめて、
そっとポケットにしまった。
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名のない作者。(プロフ) - しぇるさん» とてもステキなお言葉をいただけて嬉しいです(*´-`)かわいく、かっこよく……。キラキラした日常を感じて頂けただけでわたしは嬉しいです!コメントありがとうございます(´∀`) (2018年10月5日 11時) (レス) id: c6d217d91b (このIDを非表示/違反報告)
名のない作者。(プロフ) - 無音さん» 今回は、普通の恋人同士にもありそうな小さな不安や幸せを描く。というテーマのもとで書いたので、心が温かくなったと聞いてとても嬉しいです(*´-`)こちらこそ、読了。コメント。ありがとうございました! (2018年10月5日 11時) (レス) id: c6d217d91b (このIDを非表示/違反報告)
しぇる(プロフ) - 完結おめでとうございます!作者様の表現から覗く二人の世界はどこまでも煌めいていて、薮くんはかっこいいし光くんは可愛いしでとても楽しく読ませていただきました!今後も素敵な作品お待ちしてます(*´∀`) (2018年10月2日 21時) (レス) id: cb0e933bb5 (このIDを非表示/違反報告)
無音(プロフ) - 初コメ失礼します。完結おめでとうございます!ラストは心がぽっと温かくなりました…(*´-`) 楽しませていただきました、ありがとうございました! (2018年10月2日 20時) (レス) id: 182c624bb9 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃんじま(プロフ) - 名のない作者。さん» 楽しみです!!私も作者様みたいな作品を描きたいのに駄作ばかりwww (2018年9月3日 22時) (レス) id: 9baa58e5fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名のない作者。 | 作成日時:2018年8月7日 14時