37話 ページ38
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別日、研二くんは1人でお見舞いに来てくれた。
『Aちゃん?もう1人で無理しちゃダメだよ。』
研二くんはきっと真面目に話に来てくれた。
ただ、前された首元へのキスが過ぎってどうしても彼の顔が見れない。けど彼は目を合わそうと椅子に座る。
目を逸らしていたら、彼の両手が私の頬を包む。
顔をグッと上げられ、研二くんを見ざるを得ない状況だ。
逃がさない、そう語る目が好きで嫌い。
惹き込まれて、簡単に彼に従う私にしてしまう彼の目が嫌い。
『Aちゃんは研二くんとの約束が守れる良い子だよね?』
昔よく言ってた。
小さい頃、研二くんは私にこうやって約束させた。
私が元気に返事をすると、『Aちゃんは良い子だね』なんて言って頭を撫でてくれた。
昔は優しい声で、温かい目で微笑んでくれた。撫でてくれる手が大好きだった。
今の彼は低い声で優しく、けれども体の奥底がゾワッとする。大好きなのに、どこか怖い。
怖くても今すぐ頷いて、また頭を撫でて欲しいなんて欲が湧いてしまう。
けど、これだけは今すぐ約束なんて出来ない。
従いたくなる感情に必死に抗う。
「…考えます」
私がそう言うと、私の唇をなぞる彼の両親指。
『そんな悪い子になっちゃったのか…
この口を塞げばそんな悪いことも言えなくなるのにね。』
負けない。
「けんじくん」
私の唇に壊れ物のように触れる彼の腕に手をかける。
「悪い子、嫌い?」
キュッと弱く彼の腕を握って、私より目線が上の彼を見つめる。
彼の手が止まる。
「ね、嫌い?」
何も言わない彼にもう一度問いかける。
苦しそうな顔をして私の頬から手を離す研二くん。
「研二くん」
覗き込むと、椅子から立ち上がる彼。
次の瞬間、私は研二くんに包まれていた。
耳元で彼が息をしているのが聞こえる。
『俺が君のことを嫌いになるって、本気で思ってるの?』
彼の指が背中に食い込む。
「痛いよ」
『なあ、本気で思ってんのかよ…?』
彼の声が少し掠れる。
「思ってないよ、嫌いになれないでしょ?」
そう言うと彼の指の力が抜けていく。
そして大きくため息をついた。
『ホントにずりいよ。
けど俺のことそんなふうに出来るのもAだけ。
…責任とって?』
そう言うと彼は私の口を手で塞いで彼の手の甲にキスをした。
『次は直接する。』
じゃあ仕事戻るね、なんて言って彼は帰っていった。
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そば粉(プロフ) - ヨザクラさん» ありがとうございます!!これからもソワソワしていただけるように書いていきます!警察学校組登場まであと少しお待ちください! (2022年6月3日 8時) (レス) @page18 id: 16cd9ffa67 (このIDを非表示/違反報告)
ヨザクラ(プロフ) - とても面白いです!続きが気になってソワソワします!全員にフラグ立ってーーー!!!頑張ってください!楽しみにしてます! (2022年6月2日 9時) (レス) @page14 id: f4c5d262a2 (このIDを非表示/違反報告)
そば粉(プロフ) - ひええそんなこと言ってくださる柑橘類様尊すぎませんか(?)ありがとうございます!!そのお言葉がモチベーションになります!!! (2022年5月31日 0時) (レス) id: 16cd9ffa67 (このIDを非表示/違反報告)
*柑橘類*@馬鹿同盟(プロフ) - えっ尊いですね(?) 応援します! (2022年5月29日 19時) (レス) @page6 id: dcab7e85b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そば粉 | 作成日時:2022年5月27日 11時