【魔法少女は星に詠う】そんなことより暖かいお茶が飲みたい。 (ページ1)

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１章。イーハトーヴの丘ページ1

「いーはとーゔ…のおか……いーはとーゔのおか…。」
そう何度も何度もつぶやきながら、川辺で寝そべりながら夜の空を眺める少女がいた。

そう、この少女こそが、この小説の主人公、雪宮鵺こと、ルムジムだ。

ちなみに本名は覚えても何も得がないので覚えなくてもいい。

「あ”ーーー！！！！もう無理じゃ！！！！イートハイヴだか、イーハトーヴだかもう知らんぞ！！何故最近の若者は無駄に片仮名を使おうとするんじゃ！？ええい！意味がわからん！！」

半ギレしながら、バッと勢い良く上半身だけ起き上がる。

すぅっと息を吸ったが、ピクッと動きが停止した。

「………バケモノか。」

体を動かさず、目だけそちらを向かせて呟いた。

なるべく音を立てず。草の茂みに隠れるように、息を潜める。

そして、バケモノが近づいたその瞬間。

『＿＿＿＿＿＿＿＿

＿＿＿＿＿黄泉の門開く刻

＿＿＿＿＿美しき御霊

＿＿＿＿＿＿今日此処においでませい

＿＿＿＿＿＿＿』

凛と響いた声とともに、赤と青のほのかな光が飛び出した。

がさっと音を立て、変身姿のルムジムも姿を現せた。

「今宵はおんしかの？……はて…はたまた奇妙な姿じゃのう…」

伏せた目をそっとバケモノの方に向けるとふっと口元を緩めた。

自分より一回り大きく、体に星を散りばめたような鮮やかさ。

青緑のどろどろとした体には色とりどりの秋桜が。

ぱちくりとまばたきするその姿はどこか幼い子供のようで。

「…地獄耳。」

魔法発動の合図だ。

物の怪や霊と言葉を交わせる魔法

それと同時に聴こえてくる苦痛の声。

『苦しい。悲しい。寂しい。そばにいて欲しかった。嗚呼…嗚呼…。』

とめどなく聴こえてくる啜り泣き声。

「…そうじゃな。…悲しかったな、苦しかったな…。」

眉を下げ、目を伏せバケモノの前に両手を合わせる。

「…もう平気じゃ。わしらが楽にしてやろう。…なぁに。身構えるでない。…やさしくするぞ。」

ふにゃりと困ったように笑い、言葉を交わす。

バケモノの手が助けを求めるようにその両手に自分の両手を重ねる。

まだ自我があるということなのだろうか。目と思われるところから透明な水滴がぼろぼろとこぼれ落ち、地面に落ちるまでには金平糖のような星になっていた。

「＿＿＿金色錦＿信ずるものの元へ＿＿＿」

か細い声でそう呟いたかと思うと、赤と青の光がバケモノの中へと飛び込んだ。