・ ページ10
・
知らないうちに出ていた自分の言葉に、
僕は内心びっくりした。
突然一緒に行こうなんて、
まるでナンパしているみたいだ。
そんなつもりはなかったのに。
女性が嫌がってなさそうなのが唯一の救いだった。
コヴェントガーデンで
クリスマスコンサートを開いているのは知らなかった。
路上ライブやパフォーマンスで有名だとネットに載っていた場所のはずだ。
地下鉄バスキング・スキームで
パフォーマンスを見歩こうと思っていたけど、
コヴェントガーデンに行ってからでも遅くはない。
僕は目的があると
真っ直ぐに行動するタイプだけど、
行き当たりばったりなことも楽しめるタイプでもあった。
「ロンドンにはいつまでいるんですか？」
「明日までです」
「じゃあ、オイスターカードより
片道切符の方が良さそうですね。
ここのボタン押して
現金かクレジットカードで支払うと買えますよ」
僕は説明しながら自分の切符を買う。
その様子をあまりに真剣な顔で女性が見てくるから、微笑ましくて笑いを堪えるのが大変だった。
「僕がやりましょうか？」
「いえ、自分でやってみます」
重大な挑戦でもするような意気込みで、
僕が説明した通りに指差しながら丁寧にボタンを押していく。
・
僕の2倍くらいの時間をかけてやっと発行された切符を取り出す。
「やったー！ 一人で買えました」
あまりの喜びように、
大したことでもないはずなのにこちらも嬉しくなる。
「それじゃあ、ホームへ行きましょう。
コヴェントガーデンなら、ピカデリー線ですね」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 296人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちよこれいと
| 作成日時：2023年6月11日 22時
