神様と過ごした或る日のこと【SVT/MH】 (ページ4)

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　ふと空気がざわついているのに
気がついて車内を見渡すと、
乗務員がワゴンを押している姿が目に入る。

ミールサービスが始まったようだ。

　イヤホンを外して待っていると、
こちらがアジア人だと気づいた乗務員に
フランス語訛りの英語で話しかけられる。

「メインはどちらになさいますか」

「魚料理で、
飲み物は紅茶をお願いします。
　あ、デザートとパンはいらないです」

　こんな時まで
脂質と糖質を考えている自分が嫌になるが、
年末のコンサートまでは仕方がない。

「ミスター、お連れ様は何になさいますか？」

　連れなんていない、と、思ったが。
　向かい席に座る女性のことかと気づいた。

　アジア人らしい黒髪だからか、
乗務員は勘違いしたようだ。

　その女性はというと、
ヘッドフォンで耳を塞いで
窓側に置いたパソコンをかぶりつくように覗き込んでいる。

ボソボソと口ずさみながら作業に没頭して、
こちらを見向きもしない。

「あー、彼女には肉料理と、
おすすめのパンを二つ。
　それからガス抜きの水と紅茶を」

「かしこまりました」

　もし魚料理がいいと言われたら
自分のものと交換すればいいだろう。

　料理を並べ終わった乗務員が挨拶しても、
まだ向かい側の女性は気づかない。

　仕方なく、パソコンと女性の間に手を入れて振って、視界を遮った。

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