帰国、幕間 ページ25
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帰国するやいなや、
僕を指差しながらボノニが吠えた。
正確には、僕の首元を指差しながら。
「なんでヒョンそれ持ってんの？！」
「声でかいっ…ボノナ、どうしたの？！」
普段落ち着いているボノニの珍しい大声と慌てように、僕まで伝染したように大声で答えてしまう。
「それっ！それ！！」
僕が首にかけていた、
Aに貰ったヘッドホンを触れるか触れないかの位置で手をあわあわとしながらボノニが叫んだ。
触ればいいのに、
まるで許可がないと触ってはいけない
大切なもののように振る舞うから可笑しかった。
「ああ、これ？ もらったの」
「だからなんでAのヘッドホンを持ってるんだよ？！」
「え？」
なんでAのって知ってるの？
偶然知り合った一般人の女の子と一緒に観光したことなんてまだ誰にも話してないのに？
まさか僕が気づいてなかっただけで、
現地のファンか記者が写真でも撮っていたんだろうか。
そんな不安と疑問を思い浮かべた瞬間
「A？！」
音楽雑誌を開いていたウジヒョンを筆頭に他のメンバーも寄ってきた。
え、なんで寄ってきたの？
「なんで僕がAから貰ったの知ってるの？」
「だってそのヘッドホン、
世界に一つしかないA限定モデルじゃん！」
「だからなんでAを……」
知ってるの、という言葉は宙に消えた。
ウジヒョンが僕の目の前で開いていた音楽雑誌の見開きページ。
そこにはあのAが写っていた。
見出しには
『２０世紀ポップス界の神様、
世界的アーティスト・レイの
初ベストアルバムが全米アルバムチャートで見事初登場一位を獲得』
そうだ、どこかで見たことがあると思ったら。
「ミョンホヒョン、まさか本当にAのやつなのそれ？！」
スングァンが顔を真っ赤にして
興奮気味に僕のヘッドホンを見つめていった。
僕は音楽の神様と会っていたらしい。
どうなの、教えてよ！と迫るメンバーに
この旅のことを言おうと思ったけれど、
なんでか口から出たのは
「僕の神様とまた会えた時に、教えてあげる」
そう言って、唖然としているメンバーを置いて逃げ出した。
もちろんヘッドホンを耳にかけながら。
(了)
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作者名：ちよこれいと
| 作成日時：2023年6月11日 22時
