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そして歌が始まったところを思い出し、
気づかないうちに歌が口から漏れていた。
ギターの音の流れに任せて、ラだけで歌う。
僕だけにかすかに聞こえる音量で
Aがユニゾンをし、より歌が空間に広がる。
うわあ、鳥肌が立った…
自分が二人いるみたいな、完璧なユニゾン。
僕の声はボーカルトレーナーも言うくらい、
独特な響きがある声だと言われているのに。
その特徴すらもとらえていた。
Aはいたずらがバレたように笑ってる。
無邪気な、柔らかい声。
その声が楽しそうで、
それに引っ張られて声も感情も大きくなる。
周りの観光客が、
音に引き寄せられるように集まってきた。
そして先ほどのあの曲だとわかると、
一緒に歌ってくれる人がでてきた。
グループ最後に入った僕は、
韓国語ができなかった。
優しいメンバー達は
一生懸命サポートしてくれて、
なんとか話せるようになったけれど、
外側の人たちはそうはいかなくて。
特に歌となれば発音や、
声にまでとやかく言うアンチはいまだに尽きない。
メンバーからはその特徴的な声がいい、と言われたけど。
十三人という大所帯のグループで、
少しでも歌割りが増えようものなら、
わざわざアンチが直接罵詈雑言をいうなんてこともあった。
僕が上手くなればそんなことはなくなる。
だけど、下手なままだったら？
メンバーに迷惑をかけるんじゃないかと不安で、歌が上手になりたい、と強迫観念に駆られながら練習を続けていた。
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作者名：ちよこれいと
| 作成日時：2023年6月11日 22時
