神様と過ごした或る日のこと【SVT/MH】 (ページ19)

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「そういえばこのワインいくらでしたか？」

「僕が一緒に飲みたくて買ってきたので、
気にしないで」

「ありがとうございます」

　

Aはペコっと頭を下げてから、ニッコリと笑った。

「さっきの演奏良かったですね、
思わず一緒に音楽したくなる感じ。
　楽しかったなあ」

「うん。僕も歌えばよかったな」

　すんなり、その言葉が出てきた自分自身に僕は驚いていた。

　歌詞もわからなければ
聞いたこともない楽曲だったのに、いったいどうやって歌うというのか。

「じゃあ、歌ってみる？」

「ええ？」

　戸惑っている僕を余所に、
Aはずっと持っていたギターケースからアコースティックギターを取り出しはじめた。

「さっきの曲初めて聞いたから、
忘れる前に弾いておきたくて」

　僕は目をぱちくりした。

　さっき聞いたばかりの曲を？

　覚えてたってこと？

　しかも、ここのコンサートに呼ばれたであろうプロみたいな人たちが演奏してたものを？

　と、突然Aがサビの一番盛り上がっていたフレーズを掻き鳴らした。

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