第23話 ページ25
取り乱してしまった。まさか自分でもこんなに泣くとは。しかし、泣いている場合ではない。残りのお金ももう少ない。体が綺麗になった今、私は働き先を探さなくてはならないのだ。
…12才でも働ける場所なんてあるのだろうか。
うーん、と悩みながら街を散策していると、ある一つの建物に目が付く。騒がしい男達の声が中から聞こえてきた。
"やれー"だの、"ぶっ殺せー"だのという物騒な声だ。
うわ、近寄らんとこ。
咄嗟にそう思ったが、待てよと思い直す。入口にいた関係者であろう男に尋ねてみる。
『ここはなんの場所ですか?』
「あ?悪いことは言わねえ、帰りな。ここはお前みたいなガキが来る場所じゃねえ」
『戦って勝ったらお金が貰える場所で合ってますか?』
「おい、話を聞け」
ビビりで泣き虫の私でも、皆に厳しく鍛え上げられた戦闘能力は持っている。あまり自信過剰になるのもよくないが、ある程度なら戦えるはずだ。
元々、ここで十分なお金を稼いだら飛行船に乗って、天空競技場へ行こうと思っていた。金を得る手段に戦いを用いることは覚悟の上だ。勿論、真っ当に働けるならそちらの方がいいが。
何も持っていない人間が平和な日々を手に入れるには、危険を冒さなければいけないのである。
中身をちらりと覗く。ワイワイと騒ぐ観客、リング上の戦士達…どうやら念能力者はいなさそうだ。パッと見たところ、女性もいる。
『年齢制限とかありますか?お金がどうしても欲しくて』
「ねえけどよ、まじでやめとけって」
『腕には自信がある方です!お願いします』
「…チッ、後悔しても知らねえぞ」
男は少し待ってろと言い、中へ入って行った。そして、いかついおじさんを連れてくる。
「おいガキ、金が欲しいんだってな?戦ってもいいぞ」
『ほんとですか!』
「ただし、情けねえ負け方したら…命はねえ。どうする?」
なるほど。
女の子供が戦う、という時点で話題になるし、勝てば尚更。
一方負けたとしても、馬鹿なガキだと笑い者として観客は盛り上がる。
とはいえ、その盛り上がりに二度目はないため、さっさと処分してしまおうという考えか。
なんなら観客の前で殺すのがパフォーマンスになるのかもしれない。
開催者としては私という存在にメリットがあるというわけだ。
『大丈夫です、頑張って勝ちます。勝てなくても、ただでは負けないつもりです』
「…いい度胸だ」
怖さでいえば含みのある笑みを浮かべてる時のクロロの方が怖いからなあ、と心の中で呟いた。
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推しの命は私の命 - 番外編だけでも書いてくれ (3月2日 21時) (レス) id: be6e33eff1 (このIDを非表示/違反報告)
あいす - クロロがドロドロしていて凄い刺さりました,,😭めちゃ面白いです!!応援してます!!!! (9月29日 13時) (レス) @page28 id: d200d8285a (このIDを非表示/違反報告)
ritsu(プロフ) - 次がすっごく楽しみです!!!頑張ってくださいね! (9月12日 23時) (レス) id: 09c2417c6f (このIDを非表示/違反報告)
みのる - 続きすごい楽しみです!!!待ってます!!! (9月11日 23時) (レス) @page48 id: b8a09115f0 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - めっちゃ面白いです!続き楽しみにしてます! (2023年5月3日 12時) (レス) @page48 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ x他1人 | 作成日時:2021年8月27日 15時