第22話 ページ24
『ふー…ここらが限界かな』
あれから私は流星街を出た。流星街は公式としては無人の街。バスなど交通機関が通っている訳もないので、自分の足で外の世界に出なければいけない。出入りが自由であることは幸いだった。
流星街に一番近い街に徒歩、そこからは所持金と相談しながらバスで出来るだけ遠くまで来たというのが現状だ。
『さて、"温泉"か…』
でかでかと温泉と書かれた看板に、心が躍る。
ホテルなんて泊まれるほどお金に余裕があるはずもないので野宿だが、2,3年ぶりに温かい湯舟に浸かるくらいは許されたっていいだろう。
それに…バスに乗った時に、隣の人に"くさっ"と言われたことがあまりにショックだった。まぁ、臭いのは当たり前のことだ。海で水浴びして体が良い匂いになる方がおかしい。
因みにハンター文字はクロロに教わっていた。本当にありがとう。貴方には足を向けて寝れません。
文字が読めていなかったらこの旅も困難極まっていた。バスにも乗れなかっただろう。
『12才、１人です』
「子供料金1人ね。315ジェニーだよ」
315ジェニー。
日本にいた時なら何も考えずに出していたお金が、今や大金だ。
しかし、これは必要な出費である。体を綺麗にしないと、お金を稼ぐために働くこともできない。臭すぎてバイトの面接前に門前払い、なんて嫌だ。
「あんた、今まで大変だったんだねぇ」
おそらくこの温泉を運営しているであろうお婆さんが、しみじみとそう呟いた。汚く貧相な身なりを見て、今までの私の境遇を察したのだろう。
「ゆっくり浸かっていきなさい」
『はい！ありがとうございます』
とても優しい人で、温かくて、無性に泣きそうになった。
＿＿＿＿＿
『っく、うっ、あった、かいぃ…っ』
「だ、大丈夫かい？」
結局泣いた。
だって温かいんだもの。石鹸の良い匂いが自分からするんだもの。お風呂とはなんと素晴らしい文明なんだろうと感激した。おかげで一緒に入っていたおば様方に随分心配をかけてしまった。
クロロ達も、早く外の世界に出てこないかなあ。
旅団として暴れるために出てくるなら、こちらの住人はおっかなくて困るだろうが、私としてはそれでもいいから早くこの幸せを味わってほしい。
…。
『ひ、う、っく…ぅっ』
「ああ、また泣いちゃったわ…」
「色々あったのよきっと」
寂しい。驚くほど寂しい。もう皆が恋しい。
でも、皆にはもう会わない覚悟で出てきたのだ。私に泣く資格はない。ぐっと涙を必死に引っ込めた。
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推しの命は私の命 - 番外編だけでも書いてくれ (3月2日 21時) (
レス) id: be6e33eff1 (このIDを非表示/違反報告)
あいす - クロロがドロドロしていて凄い刺さりました,,😭めちゃ面白いです！！応援してます！！！！ (9月29日 13時) (レス) @page28 id: d200d8285a (このIDを非表示/違反報告)
ritsu(プロフ) - 次がすっごく楽しみです!!!頑張ってくださいね! (9月12日 23時) (レス) id: 09c2417c6f (このIDを非表示/違反報告)
みのる - 続きすごい楽しみです！！！待ってます！！！ (9月11日 23時) (レス) @page48 id: b8a09115f0 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - めっちゃ面白いです！続き楽しみにしてます！ (5月3日 12時) (レス) @page48 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナキサ x他1人 | 作成日時：2021年8月27日 15時
