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漸く迎えた期末の筆記試験。
闘志を燃やしている者や、青白い顔で単語や構文を繰り返している者、ワクワクしている者とたくさんの反応を見せていた。
郁だけは変わりなく、そして滞りなく翼を演じていたが、そんな時でさえ爆豪はボロを出さないかと郁に監視の目を光らせている。
筆記試験が終わると皆同じように息を吐いた。
実技試験は明日。
ほとんどの生徒たちは疲れた顔をしていた。
当たり前である。
国立で偏差値79の学科試験が簡単なはずがないのだ。
だが、郁だけは1人違った様子である時からずっと眉をしかめている。
具合が悪いのかと誰に聞かれても聞かれても大丈夫としか答えないが、顔色も悪くはないため周りはそっとしておくしかなかった。
そんな彼を爆豪と轟、そして緑谷は見逃すはずもない。
終礼を終えるとすぐに教室を出て行った郁を緑谷と轟の2人で、爆豪は1人で追いかけたのだ。
何処かへ急いで向かっているようだが、時折頭を押さえる仕草をする郁にみな首を傾げた。
郁が足を止めたのは、小さな踏切の前だ。
勝「おい郁！！」
追いついた爆豪は確信したように名前を呼ぶ。
郁は振り返ったが、それには答えずまた前を向いた。踏切の中に立つランドセルを背負った少年を見て、郁はゆっくりと足を進める。
カーンカーンと踏切の遮断機が降りる音がしても郁は足を止めない。
2人とも轢かれてしまうと、駆け寄ろうとした瞬間だった。
『…わかってる
僕が伝えるよ』
その小学生ではなく何もない、いや正確には爆豪たちには見えない何かに話しかけていた。
それが自分は郁ではないと言っていた彼が郁である何よりの証拠だった。
『ねぇ、光くん』
「…どうして、僕の名前」
『きみのお兄さんから聞いたんだ』
「お兄ちゃん、から？」
『ずっと、きみは待ってたんだね
この踏切の前でお兄さんが迎えに来てくれるのを
…1人で待ってたんだね』
酷く寂しげな声に、3人は足を止めた。
その少年は涙を浮かべながら郁を睨みつける。
「…お兄ちゃんは、来るって言ったんだ！」
『…お兄さんから光くんに伝えてほしいって頼まれたんだ
“ひぃ、迎えに来られなくてごめんな
またいつか一緒にヒーローごっこしよう”
って、言ってたよ』
「っ…うぅ……お兄ちゃんっ！！」
郁はその子どもを抱きしめ、踏切の外へ出た。
わんわんの泣き喚く子どもを同じくらい悲しそうに、そして慈しむように抱きしめた。
『きみはお兄さんの分まで生きて』
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ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
