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「郁」
誰かに呼ばれて顔を上げると、手が伸ばされていた。
『っ！？』
咄嗟に振り払って、バクバクと激しく脈打つ心臓を抑える。
勝「…おいてめぇ、急にどうした」
上「すっげぇ顔色悪いぜ？
具合悪いのか？」
切「リカバリーガールのとこ行くならついてくぞ？」
瀬「どうした？爆豪になんか言われたのか？」
勝「何も言ってねぇわ！ぶち殺すぞ！」
しまった。完全に違うこと考えすぎて変な反応をしてしまった。
4人は心配そうな、少し訝しげな顔で僕を見つめている。
『「あはは、ごめんね
なんか、ぼーっとしてたみたい
やっぱりお腹空いてないから、先教室に戻ってるね
買ってきてくれたのにごめん
お金これ』」
切「それは全然構わねぇけど
本当に大丈夫か？」
『「うん
本当にごめん』」
少し怪しいけど、今は彼らから離れておこう。
精神が不安定になると個性をうまく制御出来なくなる。
僕は教室にはいかず、校舎裏の誰もいない木陰に座った。
そこにいた猫の親子を少し離れたところから眺めていると、ずっと黙っていた翼が口を開いた。
「…郁、いつまで続けるんだ」
『いつまでって？ずっとだよ
俺が俺である限り、ずっと俺は翼だから』
「…お前もわかってるんだろう？
みんな本気でお前のこと心配してるんだよ
みんな助けようとしてくれてる」
いつの間にか足元に寄ってきていた猫を撫でる。母猫はその光景を見ると、どこかへ行ってしまった。
この子猫も、置いていかれたらしい。
いや、この場合はこの子猫が母猫を置いていったのか。
僕はその子猫を抱き上げて、ふわふわとした優しい毛並みにキスを落とした。
光になって消えていくその子を見送り、腰を上げる。
もうすぐ昼休みが終わる時間だろう。
教室に戻ろう。
「ねぇ」
『……』
「助けて…」
『……』
校舎に戻って教室に向かっていたら、1人の幽霊がずっと話しかけてくる。
…正直鬱陶しい。話しかけられても今は助けられない。
周りに人はいないけど、誰が見てるかわからないこんな場所で、もし視えることがバレたら気付かれる。
「おい」
『……』
「ねぇ」
『……』
「なぁ、お前」
『……』
「お願い、助けて」
『……』
「かすか 『うるさいな！！』っお」
あまりのしつこさに振り返ると、少し驚いた顔をした轟くんがいた。
…最悪だ。
幽霊の方に気を取られすぎて、彼からの呼びかけも幽霊だと思って無視してたらしい。
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ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
