黒い少女2

68_手合せ ページ33

右手、左足、左手、と見せかけて右足。

タンタンタンタン、シュッ、シュッ

先程から永遠と攻防が続く。どちらかが有利なわけでもなくただひたすら効かない攻撃を繰り出しては相手の攻撃を避けたり受け止めたりの繰り返しだ。

(かなりやる方だとは思ってたけど、まさかここまでとはね)

効かない攻撃の中にいくつか不意打ちを狙ったものを入れたが、A嬢は涼しい顔をしてかわしてしまう。それどころか俺の更に裏をかいて攻撃してくることさえあった。

オビ「そういえばA嬢、今日俺木の上で昼寝してたんだけど、毛布とか掛けてくれたりしてくれたかい？」

ここに来たもう１つの目的をふと思い出して問いかける。

A『………そんなことはしてない』

戦い中だと言うのに目を逸らしながらA嬢は答えた。

(ふっ、本当にわかりやすいお嬢さんだ)

俺はつい口元を緩めてしまう。やっぱりあの毛布はA嬢が掛けてくれていたのだ。と、それよりも…

(女の子相手に思いっきりやるのは悪いと思って軽くしてたけど、逆に迷惑ですかねぇ)

終わらない攻防を続けそんな事を考えた瞬間、突然鋭い蹴りが鳩尾をめがけてとんできた。

(うぉっと危ね！)

咄嗟に後ろに跳び構え直す。

A『…準備運動はもういいでしょ、やるなら早く本気を出してくれる』

オビ「あははっ、バレてたんだね。それじゃあお言葉に甘えて」

バレていたのなら遠慮する必要はない。完全に本気、というわけではないが少し本気を出させてもらおう。
俺は少しニヤっと笑ってから一気にA嬢の目の前まで詰め寄り足を払う。しかしA嬢は簡単にそれを避け、更には顔をめがけて肘打ちを出してくる。俺はそれをギリギリの所で避けながら目の前に来た横腹を思いっきり払う。が、A嬢は人間とは思えない身のこなしでかわし、一度間をとった。

A『…やっぱり今日はここまでにしよう。何だか疲れた』

突然A嬢が戦闘態勢を解き、訓練場の出口へ歩き始めてしまう。

オビ「えっ、A嬢大丈夫かい？もしかして俺無理させてました？だとしたらごめん」

俺は慌ててA嬢を追いかけて横に並ぶ。横から顔色を伺って見るが、特にいつもと変わっているようには見えなかった。少し違うとしたら無表情に少し眉間にシワが寄っているところか？
A嬢は立ち止まり『…一人で戻れる』と言い残して去って行ってしまった。
何も言えなかった俺だが、この後何か起きるような予感がしてならなかった。

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