黒い少女

14-2_挨拶の握手 ページ18

〜続きです〜


驚いてそう聞くとA嬢は小さく首を縦に振る。このお嬢さんは本当に握手をした事がないらしい。

オビ「そりゃ失礼しました。えっとですね、挨拶の時とかによろしくって意味を込めて手を繋ぐんですよ。ほら、こんな風に」

そう言いながらA嬢の手首を掴み持ち上げ俺の反対の手と繋がせる。持ち上げた事で今更ながらA嬢が真っ黒い手袋をつけていることに気がつく。

(手小さっ！それに凄く細い。力を入れすぎたら簡単に折れそうだ。)

そんな事を思いながら繋いだ手を軽く上下させる。

オビ「はい。これでこれからよろしくって意味になるんですよ。ご理解頂けました？」

そう言うとA嬢はすぐさま手を離して少し機嫌の悪そうな声でこう言った。

A『理解はしました。でもさっきも言ったように貴方とこれからよろしくするつもりなんてなかった。今のは取り消して下さい』

こりゃまた随分と嫌われたようだ。まぁ取り消すつもりなんてないけどね。

オビ「残念ながら一度したらもう取り消せないんですよお嬢さん。っていうことなんでこれからよろしくお願いしますね？A嬢」

そうやって笑いながら言ってやるとA嬢は珍しく無表情から複雑そうな表情に変わっていた。
しかしそんな表情を見られたのはほんの一瞬で瞬きの後にはまたいつもの無表情に戻っていた。


オビ「そういえばA嬢、1つ聞いていいですか？」

A嬢はいつもの様に答えない。しかし、目だけはこちらをしっかりと見ているからやはり、"良い"ということなんだろう。

(本当、必要以外の事は話さないんだねぇ)

オビ「A嬢はなんで手袋をつけているんだい？確か戦う時は外していたよね？」

なんとなく疑問に思った事を口にする。

A『…別に。ただ汚れるのが嫌なだけよ。戦う時は刀が滑ると困るから外しているだけ』

A嬢はそれだけ言うとふわっと音もなく木から飛び降り、何処かへ去って行ってしまった。

汚れるのが嫌ねぇ。潔癖症なのか？いやでも戦う時が1番汚れてしまう筈だ。それなのに戦う時は外すってことは？………余計わからなくなっちゃったよ。A嬢。

オビ「いつかわかるといいんだけどねぇ」

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