シガレット・シルエット【及川徹】

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「見つけた」


どうしようもない元彼のどうしようもない情けない台詞。それに被せられた声は元彼よりも低い。最近は一番よく聞く声だ。


「と、徹！？」
「……実はAの家の方来てたんだ。電話、様子おかしすぎだもん。察するよ。電話からファミレスのテーマソング聞こえて、会ってるならAんちの近くのここかなって。来てみたらビンゴだし」


汗がにじみ、切れている息。急いで来たことがそれだけでわかる。誤魔化したはずが誤魔化せてなく、徹にはすべてお見通しみたいだった。


「お前さ」


今まで聞いたことのない声にびくりと肩が震える。
静かだけど、凄みのある低い声。でも、その声は私に向けてではなかったらしく、徹の目は元彼をとらえている。蛇に睨まれた蛙のように動けない元彼、私もその張りつめた空気の中では少しの身動きも許されない気がして、固まってしまう。

吸うことも灰皿に押し付けることもできない煙草の煙だけが、空気を読まないかのように穏やかにゆるりと揺れている。


「本当に好きなら、変な道に誘い込むような情けない真似すんなよ」


完全に委縮してしまった元彼が、すみませんと小さく謝る。それを見て、謝るのは俺にじゃないでしょーと、徹が言うと、ぴりりとした空気が少し柔らかくなった。

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