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8.熱に浮かされたんじゃない ページ24

「38度5分……完璧風邪ひいた……」


寒くなったり暖かくなったり気温の変化が激しい季節に対応できなかったのと、仕事で忙しい日が続き不規則だったのが良くなかったらしい。目覚めた瞬間からぐらりと揺れる視界と重たい身体にもしやと思い体温を測ってみれば、予想通り普段よりもはるかに高い数字を体温計は示した。

仕事が休みの日でまだよかったと、一度起こした身体を再びベッドに沈める。ただの風邪だから病院には行かなくても市販の薬で何とかなるか、その前に何か食べなきゃ、でも食欲ないし動くのだるいな、なんて思考がぐるぐる巡る。何もかも全部自分でどうにかしなければいけない、一人暮らしの体調不良ほど辛いものはない。

いつもよりも涙の分泌量が多く、目に映る世界がぼやぼやと滲んでいるのに加え、めまいもあり、目を開けていることすらも正直辛い。

そのまま目を閉じれば、いつの間にか意識を手放していた。




次に目を開けたのは昼過ぎ。かかってきた電話の音が目覚ましとなり、のそのそと遅い動きでスマートフォンを見ると、表示されていたのは徹の文字だった。デートからも連絡は続いている。また誘うね、と言っていたから、もしかしたらお誘いかもしれない。

メッセージならまだしも、電話だと絶賛風邪っぴき中なことがバレて余計な心配をさせるかもしれないという気持ちも過ったが、苦しさの中の孤独感には勝てなかった。


「もしもし……」


案の定、出てきた声はがさがさで、喉の痛みが酷い。


「もしもし?って声どしたの」
「風邪ひいた」
「はー!?生きてる?薬は?」
「まだ……食欲無くて」
「ダメだよなんか食わなきゃ!今から行くから待ってて」
「えっちょ」


大丈夫、という前にぶつっと切れる電話。なんだか申し訳ないなという気持ちだが、ちょっぴり喜んでしまっている自分もいた。辛い、苦しい、寂しい、その感情を風邪というものは強くさせるらしい。

たかが風邪だが、大人になると昔のようにちょっと寝れば治るほどの回復力がなくなってしまった。弱った身体は200グラムもないスマートフォンすら重たく感じてしまい、ボスっと腕ごとベッドに沈めた。

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設定タグ:ハイキュー , HQ , 及川徹   
作品ジャンル:恋愛
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ぽん(元あお)(プロフ) - あべかわもちさん» もっちちゃんありがとう〜(*^◯^*)元々短編の予定が文章ばっかぎちぎちに詰まった感じになったので内容はパッパ進みました笑 こちらこそ、最初も最後もありがたい感想くれて特大感謝です! (2019年6月9日 16時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
あべかわもち(プロフ) - 完結おめでとう! 夢主ちゃんの心の機微が細かく描写されていて、とても読み応えがある作品だった! 最後の方の展開が意外すぎて、思わず息を飲みました。最後まで物語の進行がスピード感満載で、重すぎず軽すぎず後味まで大好きです。素敵な作品をありがとう! (2019年6月8日 18時) (レス) id: 9f7db0fc1d (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(元あお)(プロフ) - オムオムレツレツさん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月14日 19時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
オムオムレツレツ - 面白いです、、更新待ってます! (2019年5月12日 22時) (レス) id: e2c913aba7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽん | 作成日時:2019年5月6日 9時

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