6.一歩ずつ、でも確実に ページ19
約束していた日、いつもより早く目が覚めた。いつもより丁寧にスキンケアをして、数カ月前に買ったまま下ろしてなかったライトイエローに白い小花を散らしたワンピースを身に纏って、普段はあまりつけないピンクのリップを付ける。
出かける前、玄関の姿見で全身をチェックすると、いつもより可愛く着飾った自分がいて、そこでようやくかなり気合が入っていることに気付いた。徹には平気ですっぴんを見せていたし、ボーダーのTシャツ、ストライプ柄のハーフパンツという果てしなくダサい部屋着姿で徹の前に現れたこともある。だが、今日は可愛く身なりを整えた私を見てもらいたいと思った。
元彼の件で心晴れない部分もあるが、デートとも呼べるお出かけを、うきうきとお洒落してしまうほどには楽しみにしていた。
待ち合わせ場所に着いたのも十五分前と、私用は五分前〜ぴったりの時間で行動しがちな私にしては早め。だが、それにもかかわらず徹は既にそこにいて、周りの女性からちらちらと視線を浴びていた。白い浅めのVネックに淡いブルーのシャツジャケットを羽織る、爽やかなコーディネートは徹によく似合っている。シンプルな装いなのに、あそこまで目立ってしまうのは流石徹というところ。
当の本人はその視線に慣れているのか気にも留めずに、私の姿を見つけたようでひらひらとこちらに向かって手を振ってくる。私も振り返して小さく走って徹に近寄った。
「早かったね」
「それはこっちの台詞だよ!何分前から居たの」
告白されてから連絡はたくさん取っていたけど、会うのは初めてで、うまく話せるか不安だったが案外すんなり言葉は出てきた。
「俺も今来たとこーなんてテンプレゼリフ言いたかったけど、楽しみすぎて三十分前から来ちゃったんだよね」
「……私も、ちょっと楽しみだった」
「すごく」楽しみだったところを「ちょっと」に言い換えてしまうのは意地っ張りな私の照れ隠し。裏のない笑顔を向けられて、楽しみだったと言われれば嬉しくなるに決まっている。これも私の単純さを知っている徹の作戦かもしれないが、同じように徹のことをよく知る私から見ればこれは本心で言ってくれていることはわかる。だから、作戦だったならばまんまと乗せられてしまおうと思った。
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ぽん(元あお)(プロフ) - あべかわもちさん» もっちちゃんありがとう〜(*^◯^*)元々短編の予定が文章ばっかぎちぎちに詰まった感じになったので内容はパッパ進みました笑 こちらこそ、最初も最後もありがたい感想くれて特大感謝です! (2019年6月9日 16時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
あべかわもち(プロフ) - 完結おめでとう! 夢主ちゃんの心の機微が細かく描写されていて、とても読み応えがある作品だった! 最後の方の展開が意外すぎて、思わず息を飲みました。最後まで物語の進行がスピード感満載で、重すぎず軽すぎず後味まで大好きです。素敵な作品をありがとう! (2019年6月8日 18時) (レス) id: 9f7db0fc1d (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(元あお)(プロフ) - オムオムレツレツさん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月14日 19時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
オムオムレツレツ - 面白いです、、更新待ってます! (2019年5月12日 22時) (レス) id: e2c913aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽん | 作成日時:2019年5月6日 9時