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「……三年引きずってたからさ、そうすぐには立ち直れないかもだけど、今度はもう諦められるように頑張るね。下手したらおばあちゃんになるまで引きずりそうで怖いもん」
「ん。俺も協力してあげるし。しばらくうじうじしてたら叱ってあげる」
「ありがと。沢山頼っちゃうかも」
「いいよ、俺優しいから」
「本当に優しいんだもん、反論できないや。持つべきものは親友だなぁ。一生親友でいてね」
この際だから普段こっぱずかしくて言えないことも言ってしまえと感謝を述べる。でもやはり恥ずかしいものは恥ずかしく、ヘラヘラと笑いながらでないと言えなかった。
徹はどんな顔をしているのだろう。照れが隠せてないムッとした顔かな、にやにやした顔かな、なんてソファで膝を抱きながら、視線を隣の徹に移す。すると、一切想像していなかった顔をしていた。不快や嫌悪が籠っている顔ではない。しかし、そこに嬉しさや照れも入っていない。不満そう、と表すのが一番合う気がした。
「徹……?」
どん底まで沈んだ心は、一度明るさを取り戻したと思っても、ちょっとのことですぐまた落ちてしまう。ネガティブモードというものに陥っている私は、様子の違う徹に不安さを抱いた。
もしかして、一生は嫌だった?重かった?ふうーと長い長い溜息をつかれ、びくりと肩が揺れる。
「ご、ごめ嫌だった?」
「あーごめん。嫌じゃない……いや、嫌だね。一生親友なんて」
「……そうだよね。ダメだな私。重いところ直さなきゃ」
「そうじゃない!」
あーもう!とぐしゃぐしゃと頭を掻き、一度項垂れてすぐにがばっと頭を上げる徹。一連の動作すべてに勢いがあり、唖然としてしまう。休日でセットしていない徹の柔らかそうな髪は、搔き乱したせいで今まで見たことがないくらい乱れていた。語気が強く、一瞬やっぱり怒っているのでは、と思ったが、ふわふわといろんな方向にはねる髪を見ている私の視線に気づいて照れくさそうに直す様を見て、怒っているわけではないと判断した。
「俺ね、性格悪いんだよ」
「……うん?」
とは言え、今の奇行は全くもって理解できないままだ。だから、次に口を開くとき何を言うのだろうと身構えていたら、とっくの昔に分かりきっていることで拍子抜け。緊張していた筋肉が一気に弛緩するとともに、呼気も漏れ、間抜けな声が出てしまった。
「悪い奴だから傷心に漬け込むからね。俺、お前のこと好きなんだよ」
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ぽん(元あお)(プロフ) - あべかわもちさん» もっちちゃんありがとう〜(*^◯^*)元々短編の予定が文章ばっかぎちぎちに詰まった感じになったので内容はパッパ進みました笑 こちらこそ、最初も最後もありがたい感想くれて特大感謝です! (2019年6月9日 16時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
あべかわもち(プロフ) - 完結おめでとう! 夢主ちゃんの心の機微が細かく描写されていて、とても読み応えがある作品だった! 最後の方の展開が意外すぎて、思わず息を飲みました。最後まで物語の進行がスピード感満載で、重すぎず軽すぎず後味まで大好きです。素敵な作品をありがとう! (2019年6月8日 18時) (レス) id: 9f7db0fc1d (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(元あお)(プロフ) - オムオムレツレツさん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月14日 19時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
オムオムレツレツ - 面白いです、、更新待ってます! (2019年5月12日 22時) (レス) id: e2c913aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽん | 作成日時:2019年5月6日 9時