シガレット・シルエット【及川徹】

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背が高く体格の良い徹の服は、平均的な女の体格の私には当然ながらゆるゆるのずるずる。本当はトレーナーだけでもワンピースのようになっていたが、少しばかり丈が短く、彼氏ならともかく徹の前でこれはイカンだろうとハーフパンツを履いた。お互い下心が無かろうと、いけないことはいけない。あと、単純にもうミニ丈は恥ずかしい。ハーフパンツのウエストに紐があればまた違ったのだろうが、抜かれていたためこうやってずり落ちを防ぐしかないのだ。


「徹がデブなんでしょ！」
「ハァ〜⁉俺はきれいな逆三角形です〜！紐がないのはゴメンね、高校生の俺が引き抜いたらしい」
「流行ってたよね、皆紐抜いてた」

今となっては懐かしい高校話に心が軽くなる。少し前までは死刑宣告をされたような気持ちだったが、少し楽になった。表情も明るくなったのか、私の顔を見て徹がふっと穏やかな顔になる。


「……落ち着いた？」
「おかげさまで……。でもまた泣くかも」
「いいよ。不細工な泣き顔見慣れてるから」
「最低……イケメンにブスって言われるとガチでへこむからやめて」
「ゴメンね冗談だよ」


ハイ、と徹からマグカップを渡される。中には熱すぎないココアが入っていて、ふわりと上がる優しい湯気が私の顔を掠った。その半透明の湯気から優しくないくすんだ白い煙、白い煙から煙草、煙草から彼……と私のどうしようもない脳みそは勝手に連想を進めてしまう。

泣くかも、なんて断定を避けた言い方をしたけれど、泣かないなんてことはないのだろうなと思っていた。鼻がつんと痛くなり、目の内側がじんじんと熱くなる。


「聞いてくれる？」


泣くとうまく話せなくなってしまうため、泣き出す前に話そうと、思いつくことからぽつりぽつりと今日の出来事を話す。「元彼と会って、そしたら子ども出来てて結婚してて、煙草も止めてた」。お前何歳だよ、なんて突っ込まれそうな残念な日本語だった。

鼻が詰まって息苦しい、酸素が足りない頭は余計に言葉を考えられなくなっていき、最後は多分支離滅裂。だけど、徹は二人掛けソファの隣に座って、うんうんとこっちを向いて、頷きながら聞いてくれていた。

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