1.午前二時に揺蕩う ページ1
明日も仕事なのに、なかなか寝付けなかった。スマートフォンに表示された時間は二時で、寝なきゃマズイと焦る。だが、焦れば焦るほど目が冴えてきて、ついにはどうしようもなくなってベランダに出た。
向かいのマンションは寝静まっていて、ほとんどの部屋の明かりは消えている。ただ、この時間でも少し遠くに見える街は煌々としていて、流石都会だなと思った。街の明かりに負けた星のきらめきはほとんどないと言ってもいい。
宮城の、特に田舎から上京してきたばかりの頃は、濁った空と濁った空気に耐えられるのか不安に思っていたが、人間の環境適応能力も舐めてはいけないらしい。すっかり慣れて、それどころか自ら濁った煙を肺に取り込むようになっていた。
寝なければ辛いのは自分。それでもベランダに出ると流れるように煙草に火を点けてしまうから、困る。
午前二時、草木も眠る丑三つ時。子どもの頃、夜更かしをしていたら母に「お化けが出る時間だから早く寝なさい」と言われたっけ。東京の午前二時は騒がしく、幽霊なんて出やしなそうで、不気味さは少しも感じない。だけど、寝間着の隙間を通り抜けるひんやりとした風は、何とも言えない孤独さを感じさせる。
こみあげてきたうら寂しさに、紫煙を燻らせながら、スマートフォンのメッセージアプリを開いて電話を鳴らす。長いコール音ののち聞こえた声は、不機嫌さをまるで隠していなかった。
「……なに、すっかりいい気持ちで寝てたんですけど」
「私は全然寝付けなかったんだ」
「知らないよ巻き込むな」
「明日、いや、もう今日か。仕事終わったら飲もうよ」
「ハァ〜？何度人気者及川さんの華金独占すれば気が済むの？世の女子が泣いてるよ」
寝起きとは思えないほど口が回る彼、及川徹。
徹とは、大学の学籍番号が前後で同じ宮城県出身ということもあり仲良くなった。大学を卒業し、お互い社会人になった今でも頻繁に連絡を取り合っている。突然芸能界に放り投げられたとしても浮かない整った顔立ちに、スポーツ推薦で入学してくるくらい運動ができ、部活に打ち込んでいた徹は大学時代それはそれはもうモテていた。
社会人になってもそれは変わらないみたいで、困ったと言いながら自慢が混ざるモテエピソードをよく聞かされる。一方で私は特別美人でないし、目立つ方でもない。ふとした瞬間に釣り合ってないなぁと思ったときもあるけど、親友に釣り合うもクソもないか、とつるむ年数が長くなればなるほど気にしなくなった。
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ぽん(元あお）(プロフ) - あべかわもちさん» もっちちゃんありがとう〜(*^◯^*)元々短編の予定が文章ばっかぎちぎちに詰まった感じになったので内容はパッパ進みました笑 こちらこそ、最初も最後もありがたい感想くれて特大感謝です！ (2019年6月9日 16時) (
レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
あべかわもち(プロフ) - 完結おめでとう！ 夢主ちゃんの心の機微が細かく描写されていて、とても読み応えがある作品だった！ 最後の方の展開が意外すぎて、思わず息を飲みました。最後まで物語の進行がスピード感満載で、重すぎず軽すぎず後味まで大好きです。素敵な作品をありがとう！ (2019年6月8日 18時) (レス) id: 9f7db0fc1d (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(元あお）(プロフ) - オムオムレツレツさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2019年5月14日 19時) (レス) id: f02ef0b594 (このIDを非表示/違反報告)
オムオムレツレツ - 面白いです、、更新待ってます！ (2019年5月12日 22時) (レス) id: e2c913aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん
| 作成日時：2019年5月6日 9時
