【名探偵コナン】 瘡蓋を剥がすな

26.やっとだ！ ページ29

零くんは帰ってくるのが本当に遅かった。
ここ三ヶ月、一緒に暮らしてみての感想だ。

日付が変わってから帰ってくるどころか、
泊まりがけのこともしばしばあった。
まさか新婚早々浮気か？ と疑いをかけてみたが、
廊下で力尽き眠っていたのを発見してからは、仕事だと確信した。

同棲しているというのに、彼のライフスタイルをいまいち掴めずにいた。
夜遅くに帰ってきては朝方にいなくなったり、
帰ってきたと思ったらシャワーだけ浴びて出て行ったり
とにかく時間が重ならない。

スーツを脱いで休んでいるところを
一度も見たことがないから、ブラックな職場であることを察して、心配が絶えない。

私が出来る最低限のこと、晩ご飯を作って置いておくと
必ず完食して、さらにコメント付きのメモまで付いてくる。
毎食違うコメントが密かな楽しみだ。

今日のメニューは、チキン南蛮とにんじんのマリネ、期限が近付く野菜たちをぶっ込んだゴロゴロスープである。

零くんの健康を考えて、一人暮らしの時よりも
きちんと栄養バランスや彩りまで練るようにしている。

私よりも料理上手な零くんには劣るが、優しい零くんは必ず美味しかったとメモに書いてくれる。

幸せだ。
少し、普通の夫婦とは形が違うかもしれないけど。

いつものように零くんの分の食事にラップをかけて、
自分の食事に移ろうと、手を合わせた時、

ドタドタ！！

玄関から騒がしい音が聞こえた。
びっくりして恐る恐る覗き込むと、
零くんが廊下をすごい勢いで走ってきて、荷物を放り投げて、
クマが出来た綺麗な目をキラキラと輝かせた。

「やっとだ！」

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