【名探偵コナン】 瘡蓋を剥がすな

19.丸め込む作戦 ページ22

「ここ教えてよ。咲本さん」

眉間に皺を寄せ、難しい顔で本と睨めっこをしている
咲本Aの前に座る。
ニコニコと笑う俺に対して、
咲本の顔はますます険しくなった。

「なんで、私の名前……」

友人によれば、普段は愛想良く接してくれるらしいが、
警戒しているからか、どこか素っ気ない。

「首席なら私の教えは必要ないんじゃないですか。降谷さん」

「名前、知ってたんだ」

「まあ、有名人だから。
それより私なんかの名前を知っている方が驚きだけど」

まだ警戒心は解かれていないらしく、
鋭い視線を送られる。
怪しまれてるなあ、と苦笑いを零して頬を掻く。

「将来のために、堪能になっておきたくてね。
そこで、外国語の成績が良い咲本さんの力を借りたくて、
知人に教えてもらったんだ。ダメ、かな？」

「……そういうことなら」

何とか彼女を丸め込むことに成功した。
彼女の成績は、外国語だけずば抜けていて、
その他は中の中。
外国語を教えてほしいというのは、
口実としては十分のはずだ。

「受けてくれてよかった。
じゃあ、代わりに何か教えようか。
学部が違うから、ちゃんと教えられるかどうかは分からないけど」

「本当？すごい助かる、ありがとう！」

身を乗り出し、食い気味で返事をされる。
彼女のあまりの勢いに、う、うん……という気圧された声しか出なかった。

しかし、これで警戒心を解いてくれたらしく、
先程までの態度とは一変。
彼女は俺に、柔らかい笑顔を向けるようになった。
ちょうど分からないところあったんだよね、と。

思えば、これが彼女との関係の始まりだった。

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