【名探偵コナン】 瘡蓋を剥がすな

1.ちょっとご相談があるのですが ページ3

「蘭ちゃん」

高校生の休み時間は騒がしい。
特に、昼休みともなれば、購買に行く人や、
他クラスからの友達と話し始めたりする。

授業の片付けをしていた蘭ちゃんは、
人当たりの良い笑顔を浮かべた。

「どうしたんですか？ 先生」

「蘭ちゃんのお父様って探偵、だったよね？」

毛利蘭という女子生徒は、校内では有名だ。
本人の空手の成績はもちろんだが、
難事件をいくつも解決した、
かの名探偵、毛利小五郎の娘であるからだ。

毎日のように新聞や情報誌などを賑わす彼は、
日本人なら誰もが知っているだろう。

「そうですけど、何か困り事ですか？」

「その……相談したいことがあって」

お願い、と手を合わせる私に、
蘭ちゃんは不思議そうに首を傾げたが、気を利かせて
人が少ないところへ移動をしよう、と提案してくれた。


「え！ ストーカー？！」

蘭ちゃんと園子ちゃんの声が綺麗に重なり、
鼓膜がビリビリ震える。

昼休みということもあり、
昼食を取りながらという話しになり、
いつのまにか園子ちゃんも加わっていた。

「そう……最初は無視してたんだけど、最近はちょっと悪質で。
警察に相談しても、証拠が無いと取り合ってくれないって言うから」

「それは大変でしたね」

「まあ、Aちゃん可愛いから、
ストーキングされるのは納得だけどねー」

「ちょっと園子！」

「いーのいーの。園子ちゃん、もっと言って」

あはは、と笑い声を上げて、
コンビニで買ったメロンパンを頬張る。
新作の夕張メロン味と、
普通のメロンとの差はあまり分からなかったけど、
とにかく美味しかった。

「じゃあ、先生。今日の放課後、一緒に帰りましょう。父にも言っておくので」

「ごめんね。ありがとう」

私のしょうもないストーカー被害を
難事件を受け持ってきた毛利探偵に
頼むことの申し訳なさを含めて、深く頭を下げた。

生徒に頭を下げる私の姿は、
その日校内で少し話題になった。

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