7.ただいま、おかえり ページ9
イヤフォンに耳を傾けて、
五線譜に筆を走らせる。
音大を出ていれば、採譜は簡単だ。
ただ、コンピュータが発達したこのご時世、
採譜の仕事はもうなくなるだろう。
同様に、翻訳の仕事もだ。
収入源が既に危うい。
まだ現役の時の収入が残っているが、
それは全て灯真の将来の学費に回している。
住まわせてもらっている身の上、
両親にはあまり迷惑をかけたくない。
多分、現役に復帰すれば、回避できるだろうが、
まだ幼い灯真を残しては、その選択は出来ない。
「どうしようかねぇ。とー君」
腕の中で私を見上げるとー君に、微笑みを返した。
「ごめんね。遊びたいよね」
「あ、そうだ。もうすぐ勇利達が帰ってくるから、
遊んでもらおうか」
そろそろ勇利の練習が終わる頃だ。
抱き上げて目線を合わせていると、
ちょうど、ただいまー、と声が聞こえた。
母屋の一室から出て、勇利達の元へと向かう。
「勇利、ヴィクトル、おかえり」
とー君の手を借りて、左右に振ると、
勇利は、とー君の柔らかな頬を人差し指で突ついた。
「A姉、とー君。ただいま」
「タダイマー」
最近、ヴィクトルは簡単な日本語を
真似するようになったらしく、
会話の中に、片言な日本語が増えた。
「疲れてるところ申し訳ないけど、
とー君と遊んでてくれる? 仕事が終わらなくてさ」
「もちろん。暫く預かるから、
ピアノ弾きに行ったら?」
「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
「ヴィクトル、A姉のピアノ、
聴いたことないでしょ?
せっかくだし、聴かせてもらったら?」
A姉がよかったらだけど、と付け足した
勇利の提案に、ヴィクトルと私は目を丸くした。
ちらり、とヴィクトルを見ると、
ヴィクトルもこちらを見て、
「……それもそうだね。
良い刺激になるかもしれない。
付いていっても良いかい? A」
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています!更新停止状態のままですが更新はされるのでしょうか? (2019年9月12日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になってます!もう更新されないのでしょうか? (2018年12月29日 21時) (レス) id: 6124a9987a (このIDを非表示/違反報告)
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