【YOI】明日、君の未来を盗みに行きます。

18.奥川ミナコの独白 ページ20

あの子が何で産んだのかは、
未だに分からない。

たくさん怪我して帰ってきたと思ったら、
夫と離婚したって言うし、
さらには妊娠までしてる、なんて。
収集がつかないくらい家族が大騒ぎ。

私は堕ろせって言ったのよ？
あんな最低な男の子どもだし、
今産んだら、暫くは仕事なんて出来ない。
私達も手助けするけど、全部は無理。
母親になるって大変なの、分かってる？
今ならまだ間に合うから、堕しなさいって。

そんなのが三日くらい続いて、疲れ果てた時、
あの子は言った。

"誰が何と言おうと私は産む。
この子と二人で生きていく"

まだ膨らんでいないお腹を撫でたAは、
既に母親の顔になっていた。
もう、誰も何も言わなかった。

あの子が、出産直前に入院した時に私に言ってくれた。

"子どもが出来るのって、全体で二割しかいないんだって。
その中でも、流産や早産で亡くしてしまう人も少なくない。
私の都合だけで、こんな奇跡を、
殺してしまうなんて出来ない"

その時思ったわ。
この子はこの子なりに考えてるんだなって。

私は母親になったことがないから、
全部は理解出来なかったけれど
私はAを、そして灯真を、
応援しなくちゃいけないと思った。
あの子を娘同然に成長を見守ってきた立場として。

え？ Aは強い子だねって？

そりゃそうよ。
だって、私の自慢の娘だもの。

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