【YOI】明日、君の未来を盗みに行きます。

17.賢い選択 ページ19

大袈裟な音をたてて、
俺の目の前に雑誌が並べられた。

「ワオ！ たくさんあるね」

「当たり前でしょう？
Aが出てる雑誌全部あるんだから」

得意げに語るミナコに目を輝かせた。
Aを振り向かせるなら、
まずは彼女のことを知るべきだ、と提案された俺は、
ミナコに頼んで、過去の彼女を知ることにした。

「これが高校生の時の雑誌。
コンクールで優勝して、話題になった時のやつね。
こっちは、大学の時。
注目され出した頃のインタビュー。美人でしょ。
で、これは留学してた時。
向こうでも認められて、有名なオーケストラと組んだり
色々活動してたみたい」

雑誌だけでなく、公演のチラシまであった。
写真に映る彼女は、ひたすらに夢を追いかけている、
ただの若者だった。

「昔は髪が長かったんだね」

「そうよぉ。黒くて真っ直ぐで。
すごく綺麗な髪だったんだから。
でも、妊娠発覚と同時にばっさり。
Aなりの覚悟だったみたい」

「もうピアニストには戻らないの？
世界でも評価される程の才能の持ち主なんだろう？」

「さあね。幸いにも、まだ支持してくれてる
人達はいるし、戻ろうと思えば戻れる。
けど、灯真がいるからね」

ようやく掴んだ夢を手放してまで、
灯真を選び、一人で母親になることを選んだ。
とてもじゃないが、賢い選択とは言えない。

「どうして、そこまでして灯真を産んだの？」

18.奥川ミナコの独白→←16.夕日のせいにしてしまおう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す