【YOI】明日、君の未来を盗みに行きます。

13.恋というのか ページ15

扉越しに微かに聴こえた歌声は、
俺に向けたものではないのに
酷く落ち着いた。

同時に、鼓動は早鐘を打っていた。

何だ……何だ、これ。

昼間に見た綺麗な笑顔が、
今聴いたばかりの優しい声が、
頭からこびりついて離れない。

目を閉じたら、瞼の裏に鮮明に彼女が浮かぶ。

部屋に帰ってもそれは同じで。

これは病なのだろうか。
自分でも馬鹿らしいと思いながら、
携帯で、頭から離れない異性と入力し、検索した。

検索結果は、"恋"
どのサイトでも、そう書いてあった。

まさか、俺が恋……？

嘘だろ、と否定した。

今まで何人もの女性と交際した。
決まって向こうから愛を囁き、
決まって向こうから別れを告げられた。
貴方は私を愛してくれない、という言葉と共に。

与えられた愛の分だけ、俺は愛を返したつもりだし、
サプライズや、欲しいとねだったものだって買ってやった。

恋人関係はギブアンドテイク。
いつだってそう思って何人とも恋人関係を結んできたが、
二十年以上ラブとライフを手放した俺にとって、
こんな感情は初めてだ。

でも、当てはまる節がいくつかある故、認めざるを得ない。

この感情の名前を、恋というのか。

その名前は、さも以前から知っていたかのように、
俺の胸にストンと落ち着いて。

自覚した途端に、頬に熱が集まるのを感じた。

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