10.田崎の場合 ページ12
楽しめない、という設定のため、
笑みを消して俯き、いかにも帰りたい、というオーラを
醸し出してみる。
小さく溜息を吐いたところで、田崎さんが歩み寄る。
「楽しくありませんか？」
隣に座る田崎さんを見上げ、ピンと背筋を伸ばす。
彼は、世慣れした柔らかい微笑を浮かべていた。
「いえ……そういう訳では」
困ったように眉間に皺を寄せる。
初対面の人にそう聞かれたら、
誰でも返事を濁すだろう。
「私は正直、退屈だと思っていたんです。
その矢先に貴方を見かけまして」
なるほど。自分と同じ心情だと思わせることで、
警戒心は一気に溶けるだろう。
硬い表情を緩め、口を開く。
「そうでしたか。先程は嗚呼言いましたが、
私もあまり気が乗りませんね。
婚約者探しに来たものですから」
「貴方のように美しい方ならば、
すぐに見つかるでしょう」
そんな台詞をよく恥ずかしげもなく言えるな……と、
内心苦笑しながら俯いた。
「あまり色恋沙汰に興味がなくて」
「ほう……それはそれは。もったいないですね。
学もあり、可憐な貴方が色恋に興味がないと知って
失望した男も数多いでしょう」
「そんな！ お世辞はよしてください」
「お世辞なんかじゃありませんよ。
嗚呼、でもちょうど良かった。
これなら敵もいませんね」
「どういうことですか？」
たっぷり間を空け、田崎さんが私と視線を絡めて
私の手を取り、左手の薬指に口付けた。
「貴方の婚約者に立候補したい。いけませんか？」
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ナツみかん(プロフ) - 颯花さん» ありがとうございます(^ ^) そう言っていただけて嬉しいですo(^_^)o期待に添えられるよう、精一杯頑張らせていただきます(￣^￣)ゞ (2016年9月23日 18時) (
レス) id: a5116f4b36 (このIDを非表示/違反報告)
颯花 - とても面白いですね。更新楽しみにしています。 (2016年9月23日 17時) (レス) id: 895d44bde7 (このIDを非表示/違反報告)
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