鉄仮面に罅が入る【忍足侑士】

終章 ２ ページ25

最初見た時に度肝を抜かれた業務用の大きな洗濯機から
選手のジャージやタオルを取り出し終わったところで、
死角となっていた真後ろからポニーテールを突然引っ張られた。



誰の手か解らないまま、体ごと洗濯機の影に引きずり倒される。
怖い、というより唖然としていると、
マネージャーの先輩に取り囲まれた。



あー、なるほど......




さっきまで頭の中で鳴っていたポップな音楽はぴたりとやみ、
昔からの癖でこの状況を客観的に見てしまう。




そういえば昔から、
お母様に殴られている時ほど自分の非を探そうとしていたな。
お母様を正当化しようとしていたんだ。
母親からの呪縛からは解放された気になっていたが、
体に染み付いたものは抜けきれていないらしい。




忘れたい過去の自分を思い出すし、地面にぶつけた体は痛い。
どっちみち最悪の気分だ。



先輩のひとりがドスが効いた低い声で「あんたさぁ...」と呟くと、
またポニーテールを引かれ、立ち上がらされた。

転ばせたり、立ち上がらせたり、はっきりしない人たちだな。




髪を掴んでいる先輩と、囲んだ先輩が４人。

ポニーテールの根本を思い切り掴まれているのであまり身動きできない。

今のところ、周りに人影はない。




現状確認をしながら刺激を与えないよう黙っていると、
「何とか言えよ！！！」と怒鳴られた。

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