理由2 ページ8
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『ま、そんなくだらない理由で、ボロ泣きしちゃったってことですね！ほんと、ごめんね！』
あ、無理をしている、と焦凍は思った。
Aはにっこり笑っているが、どこか表面に貼り付けただけの笑顔のように感じられた。
Aの赤い目元をじっと見つめ、焦凍は静かに言った。
「…くだらなくなんて、ないですよ」
Aの目がふと丸くなる。
まっすぐに彼女を見据えたまま、焦凍が言った。
強い意志を宿した目だった。
「くだらないわけないです。あんなに泣いちゃうだけ、そんなに辛いだけ、A先輩が本気だったってことでしょ。人が人のこと想うことが、くだらないわけないです。どんな形であれ。絶対に」
どこか、自分自身に言い聞かせているようだった。
こんなにもまっすぐな言葉を返してもらえるとは思っておらず、Aは胸を打たれた。
焦凍の言葉に、瞳に涙がまたじわりと滲む。
『や、やめてよ〜、あー泣きそ。また泣きそ！』
涙がこぼれないように、上を向いてAが笑う。
その様子を優しく見守りながら、焦凍も笑った。
『あーあ、後輩に今日は随分助けられちゃったな。先輩としての尊厳、皆無！』
「尊厳…？や、始めからそんなのはありませんでしたけど…」
『っおーい！びっくりしたあ、えっなに焦凍くんってそういう感じ！？冗談とか言うの！？まじか！！』
唐突にボケてきた焦凍に驚いてAが言うと、焦凍は楽しそうに声をあげて笑った。
クールな表情が崩れて、優しい顔になる。
普段とのギャップにAは不覚にもどきりとした。
『…うん、でも』
恥ずかしそうに目をそらしながら、うつむいてAが言う。
『ありがとね、ほんと』
別れた彼との思い出を振り返りながら泣きながら帰っていたところに偶然出くわしたのが、焦凍だった。
はじめは嫌なタイミングで会ってしまったと思ったが、結果として随分助けられてしまった。
心が軽くなったのが自分でもわかる。
『いやー、元気でた！今度お礼させて。ご飯でも食べに行こ、先輩の尊厳を取り戻す！』
焦凍にふざけて言われたのを根に持っているようにAが言う。
焦凍は笑って、喜んで、と答えた。
『あ、私降りる駅ここだ』
最寄駅につき、焦凍の方を振り返ると、Aはにっこり笑った。
『今日はありがとねヒーロー！おやすみ』
おやすみなさい、と焦凍も返す。
遠ざかっていく小さな背中を、焦凍はずっと見守っていた。
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続く (更新停止中)
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紅茶(プロフ) - すみません、さっきので｢よろこんで｣を漢字にしちゃってました(;^_^A (2018年7月5日 16時) (
レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - コメントお邪魔します！｢バッドエンドも喜んで｣を読んでいて、轟君少し悲しいな…。とか思っていたので、新しい作品とても嬉しいです！続きを楽しみにしてます、頑張ってください！ (2018年7月5日 16時) (レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファン第1号になりました。更新楽しみに待ってます。頑張って下さい。 (2018年7月4日 21時) (レス) id: 45b1fffadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年7月4日 19時
