理由 ページ7
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最悪だ、とAは胸中で呟いた。
最悪だ。
知り合って間もない、しかも年下の男の子の前で、ボロボロに泣いたうえにあまつさえ気を使わせて助けてもらうなんて、近年稀に見る最悪な日だ。
自己嫌悪に襲われながら、そっと隣を歩く焦凍の顔をうかがう。
焦凍は気にしていないようだったが、それすらも焦凍の気遣いなのではないかとAはまたしても激しい自己嫌悪に陥った。
『…あのー…』
「はい」
『ご、ごめんよ…？』
恐る恐るAが言うと、焦凍は目を丸くしたあと、小さく吹き出すようにして笑った。
「なんで謝るんですか」
『え、普通引かない…？そんな親しい仲でもないやつに突然ガチ泣きされたら。や、私は引く。私が君の立場だったら引くに引く。心中をお察しする』
実際、気になることはすごく気になったが、Aが言うような気まずさは感じていなかった。
焦凍は優しく笑って、穏やかな口調で言った。
「引かないですよ。びっくりはしましたけど」
『あ、そう…？やー、ほんとにごめん。自分でもびっくりしたわあ』
焦凍の返答に、Aは胸をなでおろした。
(…これは―――)
どこまで踏み込んでいいものか、と焦凍は思った。
一応落ち着いたようであるが、こんなに明るい人が泣いてしまうなんて、よっぽどのことがあったのだろう。
聞くべきか、聞かないべきか焦凍が考えあぐねていると、彼の胸中を読み取ったのか、Aが小さく笑いながら言った。
『…や、あのー。非常に恥ずかしいんですけど、泣いてたのはね、あれなの。最近、けっこう長く付き合ってた彼と別れまして』
「……」
『あのね！別れた時はそんっな悲しくなかったの。ていうか別れたのそうだ、あの日、焦凍くんと初めて会った日だ。あの日に向こうから別れよって言われたんだけど』
焦凍の脳裏に、敵を倒したあと、予定があるからと夜道に消えて行ったAの後ろ姿がよみがえった。
『自分でもびっくりするぐらいあっさりしてて。あ、終わりかーくらいな感じでさよならしたんだけど、今日その話を、高校の時からの同級生に聞いてもらってたらなんかびっくりするくらい泣けちゃって』
恥ずかしそうに笑いながら、Aは頬をかいた。
『別れる時はわからなかったけど、ちゃんとショックだったし、彼のこと思ってた以上に大事だったんだなって。失って気づく大切さってやつ？ほんと馬鹿だよねー、遅いっつのね』
Aは困ったように笑った。
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紅茶(プロフ) - すみません、さっきので｢よろこんで｣を漢字にしちゃってました(;^_^A (2018年7月5日 16時) (
レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - コメントお邪魔します！｢バッドエンドも喜んで｣を読んでいて、轟君少し悲しいな…。とか思っていたので、新しい作品とても嬉しいです！続きを楽しみにしてます、頑張ってください！ (2018年7月5日 16時) (レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファン第1号になりました。更新楽しみに待ってます。頑張って下さい。 (2018年7月4日 21時) (レス) id: 45b1fffadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年7月4日 19時
