涙 ページ6
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焦凍の言葉に、Aの目が見開かれる。
一瞬の間のあと、自分の目元をパッと手で押さえると、気まずそうにAは言った。
『…わ、まだ、赤かった？もう引いたと思ってたんだけどな、恥ずかし』
ぎこちなくAが笑うので、焦凍はふと不安な気持ちに駆られた。
悲しみや苦しみを押し隠して、何でもない風に笑っている、という様子だった。
普段底抜けに明るい人の笑顔にそうした影が差すと、途端に心配になる。
「……大丈夫、ですか？」
『えっ！もー、ぜんぜんだいじょぶ！ほんのちょっと悲しいこと―――』
あっただけだから、と言葉を続けようとして、不意にAはぐっと喉が詰まるのを感じた。
あ、と思った時にはもう遅かった。
大粒の涙が、Aの目からぽろぽろとこぼれた。
焦凍がぎょっとしてAの顔を凝視する。
焦凍を困らせていることを申し訳なく思って、Aは慌てて笑って見せた。
『や、違う違う、ごめん、わ、何だろー、涙止まんなくなっちゃった。待ってごめんね、すぐ止めるから』
努めて明るい声音で言いながら、Aは必死に涙を拭った。
駅構内を歩く人々が、焦凍とAの方をちらちらと探るような目線で見つめる。
「…先輩、こっち」
焦凍は思わずAの手を引くと、壁際に寄って、人からAを隠すようにAの前に立った。
焦凍の気遣いにAは胸が熱くなった。
優しい子だな、と思った。
「ここなら人に見られないんで。落ち着くまで、ゆっくり待ちましょ」
『うーーー、ごめん…。あー恥ずかしさが…恥ずかしさがすごい、恥ずかしいオブザイヤー上半期、堂々の受賞だよこれは…あ、ごめんふざけたこと言ってないで泣き止むね…』
いくらか余裕を取り戻したのか、羞恥心やら申し訳なさやらに気を重くしながらもAが言う。
焦凍は小さく頷いて、時折視線を上げて駅構内の様子を見たり、Aの顔を見つめたりしていた。
『…はい！うん！はい！もう大丈夫だわ！もうバッチリ！なんかメイクどろどろになって悲惨なことになってそうだけども！もう大丈夫だわ！』
しばらくして、すっかり泣き止んだAがいつもの調子に戻って言った。
まだ目元は少し赤かったが、泣いたことで気持ちがすっきりしたようで、笑顔も無理して作っているという風ではなくなっている。
焦凍もホッとして頷き、二人は再び、駅を歩く人の流れへと戻った。
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紅茶(プロフ) - すみません、さっきので｢よろこんで｣を漢字にしちゃってました(;^_^A (2018年7月5日 16時) (
レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - コメントお邪魔します！｢バッドエンドも喜んで｣を読んでいて、轟君少し悲しいな…。とか思っていたので、新しい作品とても嬉しいです！続きを楽しみにしてます、頑張ってください！ (2018年7月5日 16時) (レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファン第1号になりました。更新楽しみに待ってます。頑張って下さい。 (2018年7月4日 21時) (レス) id: 45b1fffadb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年7月4日 19時
