心に触れる ページ46
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渾身の一発が入ったのを皮切りに、出久のスマッシュが、頭突きが、何より言葉が、焦凍の心に突き刺さる様子をAは呆然と見つめていた。
そうか、と思った。
(出久、あんたも―――)
救おうとしてるんだね。
焦凍くんを。
「君の！！力じゃないか！！」
焦凍の顔が歪んだ。
見開かれた瞳に、様々な色が揺れていた。
オールマイトを超えるヒーローに育て上げるべく、幼き自分に過酷な訓練を強いた父の姿。
自分を庇おうとして暴力を振るわれる母の姿。
楽しげに遊ぶ兄妹を羨ましく見つめていた日々。
自分を恐れるようになった母の目。
熱湯を浴びせられた痛み。
母を失った、心の痛み。
幼き日の記憶が走馬灯のように焦凍の脳内を駆け巡り、最後に焦凍のなかによみがえったのは、大好きな大好きな、母の優しい声だった。
父を憎むことでしか自分を保つことができなかった。
でないと、心が壊れてしまった。
でも本当は違う。
憧れていたものがあった。
なりたい自分がいた。
救いたい人がいた。
救えない、母がいた。
―――なりたい自分に、なっていいんだよ。
「これは―――…！？」
まばゆい光が散った。
瞬く間にフィールドは業火の炎に包み込まれる。
理由はわからずとも、戦闘において焦凍が炎を禁じていることを知っていたA組はみな驚愕の表情を浮かべた。
轟々と燃える炎を見つめ、Aは綺麗だな、と思った。
(…ちぇ)
自分が触れることのできなかった焦凍の心へ、出久は触れたようだった。
今まで押しとどめていた感情が一度に器の外へあふれ出したかのように焦凍の炎は勢いよく燃え盛っている。
出久に負けたことは悔しかったが、Aは優しい笑みを浮かべて焦凍を見つめた。
きっとここが彼のスタートラインだ。
ここから、すべてが始まるのだ。
「俺だって、ヒーローに…！」
笑う焦凍の頬を伝い、涙がこぼれた。
「凄…」
「何笑ってんだよ」
焦凍の炎を前にして思わず笑みを浮かべた出久に、涙を拭った焦凍が言う。
「その怪我で…この状況でお前…イカレてるよ。どうなってもしらねえぞ」
出久は焦凍の言葉の裏に、全力でいく、という真意を読み取った。
最後の一撃へ向けて、二人が構える。
Aが思わず勝己のジャージの袖を握ると、その不安を和らげるようにその手を勝己が上から握った。
会心の一撃。
スタジアム中を包み込んだ衝撃ののちに戦いを制したのは、焦凍だった。
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スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
